猛暑追い風!飲料各社が競う「自販機ビジネス」 市場縮小続くが、プラスアルファの提供に活路

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このアプリは今年6月末時点で4700万ダウンロードを記録。消費者にスタンプを集める楽しさを提供すると同時に、購買データをプロモーションの設計や製品開発に生かす。同社によれば、自販機の設置先や時期による差異はあるものの、「Coke ON対応により、非対応自販機と比べてセールスが伸びる効果が確認されている」(同社広報)という。

また、キャッシュレス決済をいち早く導入してきたコカ・コーラ ボトラーズ・ジャパン・ホールディングスは、15種類以上のQRコード決済が可能となるサービス「QR de決済」を今年6月に開始。日本への訪問者数が多い東アジア圏におけるQRコード決済使用率の高さや、日本における同決済の普及に着目し、高まるインバウンド需要やコロナ後の人流回復に対応する。

サントリーは職場に設置する自販機を強化

職場に設置する自販機を強化するのが、自販機稼働台数約37万台と業界2位のサントリー食品インターナショナルだ。

導入企業の社員が2人で社員証をかざすと、それぞれが無料で飲み物を購入できる「社長のおごり」自販機や、自販機の横に軽食を販売する棚を置き、軽食と飲み物を自販機で同時に購入できる「ボスマート」など、自販機を通じて導入企業へコミュニケーションの場やコンビニのような機能を提供する。

在宅勤務の定着などにより、法人向け自販機の売り上げの回復は鈍い。それでもサントリーが法人向けに着目するのは、街の自販機に比べ、オフィスでは同じ人が同じ自販機を使う頻度が高く、購買者のニーズを把握しやすいからだ。加えて、サントリーは独自調査を通じて、職場に設置された自販機を利用する人は2割程度で、飲み物をコンビニやスーパーで購入して持ち込んでいる人が大半であることを認識し、法人向け自販機の「小売店」としての機能に進化の余地を感じた。

稼働自販機が約26万台と業界3位のアサヒ飲料は今年6月、庫内に搭載した粉末状の吸収材が大気中のCO2のみを吸収する「CO2を食べる自販機」の実証実験を開始した。これは自販機として国内初の試み。1台当たりのCO2吸収量は、スギの木20本が年間で吸収する量に相当する。吸収したCO2は肥料やコンクリートなどの工業原料に活用する予定だ。

ただ、この自販機の台数が増えれば、ルート担当者による吸収材設置・回収作業が1〜2週間に1度発生する。また、CO2を吸収した粉末を工業原料として継続的に活用する企業を見つけ出すことも課題だ。まだ実験段階ではあるものの、「将来的には法人向け自販機として、CSRに力を入れる企業などへの展開も期待できる」(アサヒ飲料の三末慶樹・自販機事業統括部長)。

市場縮小の原因について、サントリーの自販機事業でマーケティング部長を務める須野原剛氏は、サービスが急速に拡充してきたコンビニなどと比べて、「自販機の小売店としての魅力を向上させるための、メーカーの努力が不十分だった」と反省を口にする。一方で「飲み物を売る以外の価値を生み出す努力をしていけば、もっと自販機で買ってもらえるようになる」と話す。

業務効率化に加え、飲料を売るだけでないプラスアルファをいかに加えるか。メーカー各社の知恵が問われそうだ。

田口 遥 東洋経済 記者

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たぐち はるか / Haruka Taguchi

飲料・食品業界を担当。岩手県花巻市出身。上智大学外国語学部フランス語学科卒業、京都大学大学院教育学研究科修了。教育格差や社会保障に関心。映画とお酒が好き。

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