猛暑追い風!飲料各社が競う「自販機ビジネス」 市場縮小続くが、プラスアルファの提供に活路

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ダイドーは「スマート・オペレーション」を通じて、オペレーション担当者1人あたりの売上高を2026年度までに2021年度比で20%向上させることを目標にする。ダイドーの中島孝徳社長は、「数年前まで自販機ビジネスはロケーションを取る力がすべてだったが、今はしっかりとオペレーションを遂行する力がないと持続的成長は難しい」と、改革の意義を語る。

AIの予測データを確認するダイドービバレッジサービスの社員。自販機ごとにより正確な予測が可能になった(記者撮影)

ダイドーのオペレーション力に注目したのは、アサヒ飲料だ。ダイドーとアサヒ飲料は、今年1月に合同会社ダイナミックベンディングネットワークを設立。これにより、両社の直販自販機約20万台(ダイドー約13万台、アサヒ飲料約7万台)を新会社で一体的に運営し、ダイドーのオペレーションシステムを横展開していく計画だ。

アサヒ飲料は「ダイドーのシステム活用は、オペレーションの効率化を進めるうえではマスト」(アサヒグループ広報)と、ダイドーのノウハウに期待を寄せる。新会社では、ダイドー側のシステムに合わせる方向で、オペレーション業務や販売データの統合を着々と進めている。

ダイドーの自販機稼働台数は約25万台と業界4位(稼働台数は22年、飲料総研調べ)。同3位のアサヒ飲料がそのシステムに相乗りするかたちだ。ダイドーは規模では劣るものの、自販機での販売割合が8割超と業界内で突出している。今後もアサヒ飲料のように、ダイドーの運営に相乗りしようとする動きが続く可能性もある。

市場縮小が続く自販機チャネル

実は、飲料用自販機市場は縮小の一途をたどっている。

直近20年間の飲料全体の売り上げ総数を見ると、新型コロナ前までは増加基調で推移してきた。他方、売り上げ総数のうち自販機で購入された飲み物の割合(自販機販売比率)は低下し続けている。自販機の稼働台数は2013年、2014年の247万台をピークに8年連続で減少し、2022年には215万台となった。

人流の回復や今夏の猛暑などの追い風はあるが、ダイドーによれば、コンビニをはじめとする競合の店舗拡大もあり、「今後も市場規模の拡大は見通せない」という。同社がオペレーション改革を急ぐのは、こうした市場環境への認識が背景にある。

他方、定価販売が原則となる自販機は、メーカーにとって魅力的な販路であることに変わりはない。「これまで自販機で買っていた人が、今はスーパーなどで買うようになっている。自販機にもう一度戻ってきてもらうきっかけが必要だ」(ダイドーの中島社長)。

消費者に自社の自販機を選んでもらうための「きっかけ」づくりとして、各社が焦点を当てるのは、「高付加価値」自販機の開発だ。

全国に約76万台の自販機を有し、稼働台数業界トップの日本コカ・コーラ。同社は「Coke ON(コークオン)」アプリを通じて、ミッションの達成などによってスタンプを付与、一定数貯まれば自販機の飲み物を1本無料にするなどのメリットを提供する。

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