「自販機にはまだまだチャンスも伸びしろもある」、サントリー社員5名が手掛けた前代未聞の自販機決済サービス「ジハンピ」の潜在力

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縮小
井上さんは「開発中は不安でいっぱいだったけど、頭のネジを飛ばしてハイになるしかなかった」と振り返る(撮影:今井康一)

「こんなの自販機じゃない」

サントリーの井上尊之さんは、自販機の前で支払いに戸惑い立ち去る人々を見て、そう痛感したという。長年、自販機事業に携わる中で、その不便さが業界の縮小を招いていることに強い危機感を抱いていたのだ。そこで、井上さん率いるサントリーのチームは、異例の自社開発に乗り出した。それが、キャッシュレス決済サービス「ジハンピ」である。

一般的に、自販機の決済端末は機械メーカーが開発する。しかし、「ジハンピ」はサントリーの社員5名が中心となり、仕様策定から設計までを手掛けた。この前代未聞の挑戦の背景には、自販機への深い愛情と、業界の現状に対する強い問題意識があった。

シンプルな端末

井上さんが課題と捉えたのは、キャッシュレス対応機の少なさと、対応していても操作が複雑であることの2点だ。サントリーの自販機のキャッシュレス対応率は導入前で2割程度と、業界平均を下回っていた。その要因は、端末導入にかかる高コストである。また、業界には10種類以上のキャッシュレス端末が存在し、操作方法も統一されておらず、消費者を混乱させていた。

これらの課題を解決するために開発されたのが「ジハンピ」だ。その特徴は、ルートセールス担当者が短時間で簡単に取り付けられるシンプルな端末にある。これにより、端末本体や設置費用、運用コストを大幅に削減し、迅速な展開を可能にした。

消費者側の操作も極めてシンプルだ。専用アプリをダウンロードし、SMS認証と支払い方法を連携するだけで利用できる。名前や年齢などの登録は不要で、アプリを起動して対応自販機にかざせば、数秒で商品を購入できる。

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