「エウレカ」が米企業にバイアウトしたワケ

米巨大メディアは何を手に入れたかったのか

塩野:赤坂さん、西川さんのお二人で起業して今に至るまで一番の困難は何でしたか。それをどうやって乗り越えたのでしょうか。

赤坂:一番の困難は、起業当初、スタッフから「よその会社の社長はこういう感じだ、社長はこうあるべきだ」とか「エウレカも経営理念を作ったほうがいい」と求められた時です。

まだ社員が2名くらいの初期の初期だったのですが、経営者として「何が正しいのか」というものが自分の中で確立できていなかったので、どうするべきか悩みました。

しかし、この時は、西川の「今、経営理念を考えたり、社長はこうあるべき論を交わす時間はない。売上を上げないと会社が潰れる。会社は潰れたら終わり。今は、目の前にあることを必死に頑張るしかない」と核心を突く言葉に助けられました。

もう1つは、会社も少しずつ大きくなったステージで、受託開発中心の会社から脱却し、自社事業だけで会社を成立させるために変化をしようとしていた時期が苦しかったです。

受託チームは売上を上げている一方で、pairsチームは広告宣伝費がかさんで赤字がどんどん出るので、1つの会社の中で2つに分かれ、少し亀裂が入っているように感じていました。

しかし、これも、「エウレカは自社事業で成功する」「先行投資は必ず回収する、絶対に黒字になる」と言い切りつづけてきた結果、退職者をほとんど出さずに受託開発からの脱却を図ることができました。

「普通の人の目線でいること」に気を付けている

塩野:受託開発からはじまったエウレカではすべて自社エンジニアがアプリをつくっているとのことですが、自社アプリのユーザインターフェースなどで気を付けてきたことは何ですか。

赤坂:pairs/Couplesに共通して今まで気をつけてきたことは「あくまで普通の人の目線でいること」です。エンジニアやデザイナーなどのクリエイターが「こういう技術を使いたい」と言ったときに、「普通の人にとってそれは必要か」を考え抜くことに神経を注いできました。

僕らインターネット、スマートフォン業界で働く人は、ネットリテラシー、サービスリテラシーが一般人に比べて非常に高いことを忘れ、「このリテラシーが当たり前だ」と思いがちです。しかし、僕らみたいなネット系の人間は、全人口の0.01%にも満たないことを忘れてはいけません。

またpairsの場合は、日本ではまだカルチャーとして根付いていないデーティングサービスが「健全」なイメージを持ってもらえるよう、デザインの力で表現できる「健全性」「クオリティーの高さ」には、とにかく気を遣ってきました。

塩野:エウレカはベンチャーキャピタル(VC)から出資を受けずに自社の稼ぎだけでテレビCMを打つまでに成長していったと思いますが、どうしてそれが可能になったのでしょうか。

赤坂:エウレカの強みは、「70%の確証で進めること」そして「意思決定してから実行するまでのスピードはものすごく早い」という2点です。この事業に参入することが100%正しいと言えるまでの理由集めや、それをステークホルダーに伝え、納得してもらうための資料作りなどは、はっきり言って無駄だとずっと思っていました。だからこそ、VCや事業会社など外部から出資を受けるということを避けてきました。

ただ、自己資本で会社を経営することは、そんなに簡単なことではありません。だからこそ、これまで4回も収益源となるメイン事業を変更し、売上を拡大しています。これによって、スタッフ全員に「変化に対応する力」と「事業が変わっても成功を信じて前進する文化」が根付いたと思います。

これを続けてきた結果、自社の売り上げだけでテレビCMを打てるほどに成長できたのだと思います。

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