発売1カ月で第七刷発行という『家族という病』(幻冬舎新書)は、キャッチコピーが、「家族ほどしんどいものはない」です。「家族ほどしんどいものはない」が世の中にウケるなんて、どういうことでしょう? 私は少し焦りを感じて読みました。
著者の下重暁子氏は、父上の主治医から「あなたは、テレビの中でいつも優し気にほほ笑んでいる。たくさんの人々があなたの笑顔にだまされているが、なんと冷たい女なのだ。結核病棟に老いの身を横たえている父親を一度も見舞いに来たこともないではないか」という衝撃的な手紙を受け取っています。
「家族はしんどい」が賛同を得た?
このような両親との間にあった深刻な確執問題を除けば、この本には特に新しいことはあまり書かれていません。知的で優しいイメージの下重氏でさえ、お父上をそこまで避けてこられたことが、同じような問題を抱えている多くの読者を引きつけたのでしょうか。
しかしその部分だけで、これほどの版を重ねるとは思えません。なぜこの本は、多くの人に読まれているのか。今回は読者からの相談への回答ではなく、この本について考えてみます。
書かれている内容は、「なぜ事件は家族の間で起きるのか」「遺産を残してもいいことはひとつもない」「子離れができない親は見苦しい」「他人の家族との比較が諸悪の根源」「家族に血のつながりは関係ない」など、どれも以前から言われていることが多く、目新しいことが書かれているわけではありません。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら