相続専門YouTuber税理士が語る「税務調査の実態」 相続税の実地調査では実に約9割が追徴課税に

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国税庁の職員は約5万6000人。多くは全国に524カ所ある税務署に配置される(撮影:梅谷秀司)

例えば、親の介護費用に充てるために親の通帳から子の通帳に送金することがあるが、親の認知機能が低下し「あげます」との意思表示が証明できなければ生前贈与が認められず「(親から子への)預け金」とされ課税対象となる。認知機能が低下していたかどうかは実態を見て判断される。調査官は病院のカルテまでも調べ尽くす。

名義預金とともに、会社経営者の場合は「名義株」が問題になりやすい。名義株は名義人と本当の所有者が異なっている株式のこと。ほかの人の名義の株式でも、実質的には亡くなった人の株式と認定された場合には、相続税の対象になり、多額の追徴課税がなされる。とくに非上場のオーナー企業に多いが、オーナーが保有する株式を生前に子や孫、従業員らに分散させるようなケースは注意が必要だ。

名義株の調査は名義預金以上に厳しい。筆者も税務調査の現場で、調査官が株主名簿を見ながら無作為に株主を呼び出し「いつから何株持っているか今ここで答えてください」「買い取ったのならどの銀行から支払いましたか」などと問い詰める“修羅場”に遭遇した。近年は創業者の高齢化に伴う事業承継が増えているが、その際には現在の株主名簿が正しいかどうかを確認しておいたほうがよい。

2023年度税制改正により、2024年1月からは贈与税の暦年課税制度を活用した生前贈与の加算期間が3年から7年に変更される。これに伴って、名義預金や名義株が疑われるケースは今後増えるだろう。追徴課税を避けるためにも、本人の意思表示ができるうちに贈与契約書の作成を勧めたい。あげる人(贈与者)、もらう人(受贈者)、贈与する金額、日付、互いの住所・氏名を書き、押印する(認め印で可)。契約書は2通作成し、1通ずつ保管しておけばよい。

いまだに多い「タンス預金」

名義預金、名義株以外に、「タンス預金」が指摘されるケースもいまだに多い。亡くなる直前に口座から引き出したタンス預金は、当然ながら履歴から一発でわかる。相続税の申告書に計上していなければ故意の納税逃れとして重加算税の対象になる。筆者も「タンス預金は高い確率でバレる」とYouTubeで注意喚起している。

調査官は百戦錬磨で、税務署には長年にわたって蓄積された調査のノウハウとマニュアルがある。「過去にこんな場所に隠していた」などの事例も共有されている。調査対象に選ばれたら、重加算税だけは避けるためにも過去の通帳などは手元に残し、虚偽の発言をしないことだ。筆者も顧客の税務調査に立ち会う前には「記憶が曖昧なものは『わからない』で構わない。ウソだけはつかないようにしてください」と進言している。

(構成 堀尾大悟)

橘 慶太 円満相続税理士法人 統括代表社員 税理士 

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たちばな・けいた

2017年に円満相続税理士法人を開業し、現在は東京・大阪に拠点を置く。Youtube「円満相続ちゃんねる」は登録者数8.8万人を突破。著書に『ぶっちゃけ相続』がある。

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