東証プライムから新規50社超の「脱落危機」リスト 流通株式時価総額「100億円」の高い壁
10%以上を保有する大株主の場合、投資信託やファンドなどで実質的な保有者が小口の保有にとどまる場合など、東証が認めた場合に限り、流通株式として数えられる。最初のプライム市場移行基準日である2021年3月末時点で、エフィッシモから流通株式として認められるために必要な書類の提出を受けたことで、上場維持基準を満たすことができた。
ところが、2023年3月末の適合判定では、日産車体が流通株式の基準を満たしていることを証明するために必要な書類の提出を求めたものの、エフィッシモは協力を拒んだ。そのため、エフィッシモが保有する株式が流通株式とみなされなくなり、上場維持基準の不適合となった。日産車体は引き続きエフィッシモに協力を求めるとともに、一部大株主には株式売却を働きかける構えだ。
残留を懸けるか、自主降格か
上場維持基準に不適合となった企業には、2つの選択肢がある。1つは、基準適合に向けて企業価値を磨き、プライム市場に残留することだ。ただし、冒頭で述べたように不適合の状態から脱せなければ、2026年にも強制的に上場廃止となるリスクを抱える。
もう1つは、上場維持基準の緩いスタンダード市場への自主降格だ。実は、2023年9月末までなら、申請書の提出だけでスタンダード市場に移れる(制度の詳細はこちら)。みずほ信託銀行の調査によれば、6月末時点でプライム市場上場企業の47社がスタンダード市場を選んだ。
八木啓至・企業戦略開発部次長は「6月末までに(プライム市場への残留か、スタンダード市場への降格かを)決めきれなかった企業は多い。8月末から9月にかけて、次の山場が訪れる」と見る。プライム市場への移行時点で上場維持基準に不適合だったうえ、2023年に入って別の基準にも抵触した企業もおり、身の丈に合ったスタンダード市場を選ぶ動きはまだまだ起こりそうだ。
上場維持基準の判定は毎年行われるため、2024年もプライム市場の「脱落予備軍」が大量に出現する可能性は高い。日本を代表する株式市場は、基準を満たさなければふるい落とされる緊張感と隣り合わせでもある。