大奮闘の三陸鉄道、被災者の足に--震災5日後に一部運転再開、赤字なのに運賃無料
普段なら閑古鳥が鳴く三陸鉄道・宮古駅。だが、発車10分前の改札口には、すでに20人を超える客が並んでいた。
「ありがとねー」。年配の女性が改札口にいた駅員へこう声をかけた。他の客も口々に駅員に感謝の言葉をかけながら列車に乗り込んでいく。
3月29日12時45分。37人を乗せた運賃無料の「災害復興支援列車」は宮古駅を出発した。
運賃収入よりも地域の役に立ちたい
三陸鉄道は宮古-久慈間を走る北リアス線と、釜石-盛間をつなぐ南リアス線の2路線を抱える。1984年の開業時は全国から観光客や鉄道ファンが押し寄せ、5年目黒字化の計画が、初年度でいきなり経常黒字。幸先よいスタートを切った。
しかし、乗車人員は年々落ち込む一方。収支も開業10年にして経常赤字に転落。以後黒字に浮上することなく、現在に至っている。
もちろん赤字に手をこまぬいていたわけではない。各種イベント列車の運行からグッズ販売まで打てる手はすべて打った。2009年の「鉄道事業再構築実施計画」などのリストラも行い、ようやく光明が見えてきた矢先、今回の大津波が襲った。
3月11日14時46分の地震発生当時、北リアス線では白井海岸-普代間を15人の乗客を乗せた列車が走っていた。南リアス線では吉浜-唐丹間にある鍬台トンネル内に2人の乗客を乗せた列車がいた。
北リアス線を走っていた列車は安全確認の後、避難開始。乗客と運転士は本社から要請を受けた地元消防団に救出され、近くの避難所に送り届けられた。南リアス線のトンネル内にいた列車の乗客と運転士は、徒歩でトンネルを脱出して国道46号線に出たところ、たまたま通りかかった自動車に乗せてもらえ、避難所に送り届けられた。全員無事だった。