岩手県宮古市・わかめに託した復興への希望
白い雪が積もる山間の道を車で抜けると、リアス海岸の入り江には2、3隻の小船が停まっている--。ここは、日本一のわかめ漁獲量を誇る岩手県宮古市。中でも、漁協単位で生産量トップの重茂地区は住民400世帯の9割以上が漁業を生業としている。
東日本大震災では、津波の甚大な被害を受け、海辺に建つわかめ加工施設や住宅、スーパーは全て呑み込まれてしまった。814隻あった船は、わずか16隻しか残らなかった。1650人の住民の内50人は未だ行方不明のままだ。
絶望に包まれた震災から1年経った今、静かに復興への道が見え始めている。昨年5月にがれきの撤去作業が終わり、「漁業の復興には、船600隻は必要」と、重茂魚協組合参事の高坂菊太郎氏(=写真=)は考えていた。国からの補助金を待つ組合が多い中、重茂漁協は「それでは、次のわかめ収穫期に間に合わない」との英断を下し、復旧用の補助金約130億円を漁協で立て替えた。結果、320隻まで船が揃った。
6月から、ほぼ全壊の養殖施設を半数まで修復し、7月には養殖わかめの種付けに間に合った。すでに今年2月までに、早採りわかめを出荷し、3月14日には震災後初の本格的なわかめの出荷が始まった。その後は、新造船100隻の新たな入荷も決まっている。