「オランダ語ペラペラ」勝海舟に学ぶ最強の学習法 辞書を書き写してオランダ語をマスター!?

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一方、独学で『ヅーフ・ハルマ』を筆写し、蘭学塾で教えていた海舟には、十分なオランダ語のスキルが備わっていました。 伝習所での講義の合間にはオランダ人の教官との雑談を楽しんでおり、「聞く」能力が鍛えられていたので、講義も余裕だったようです。

海舟は長崎の海軍伝習所で約4年間、研鑽を積んだと伝えられています。生徒代表を務めていた海舟は、オランダ語がペラペラであり、航海の経験も豊富であったことから、生徒たちから慕われていました。

それに対し、2代目所長に就任した木村喜毅は、オランダ語もしゃべれなければ、航海経験も乏しい指導者でした。裕福な旗本の家に生まれ、若くして要職を歴任する喜毅、かたや極貧生活から努力で這い上がってきた海舟。伝習所の生徒たちが遊廓に行くことを取り締まる喜毅と、そんな細かいことは気にするなという海舟。水と油のような2人のあいだには軋轢があったといわれています。

2人の対立を物語る、こんなエピソードも。喜毅がオランダ人と話す際に、海舟はその通訳に喜毅の悪口を言ったのだとか。なかなかオランダ語に訳そうとしない通訳に、海舟は「訳さなければ、己が片言で言うてしまうぞ」と脅す始末。その通訳は海舟を恐れ、それ以来海舟の前に姿を現さなくなったそうです。

海舟は、伝習所の教師団の指導者であるカッテンディーケとは、良好な関係を築いていたといいます。カッテンディーケも権威主義的な喜毅を好んでいなかったようですが、オランダ語がわかり、責任感が強く、明朗な海舟には信頼を寄せていました。海舟はカッテンディーケと触れ合う中で、キリスト教に対して寛容な気持ちを示し、開国への意向を固めていきました。

ジョブズと同じ!勝海舟も散歩が習慣だった

散歩をすると、よいアイデアがひらめき、仕事や勉強が一気に捗ることがあります。iPhoneの生みの親であるスティーブ・ジョブズも、散歩を習慣的に行い、脳を活性化させていたそうです。

海舟もまた、散歩を習慣としていた一人でした。 伝習所時代に教官から「時間があるときには散歩をするのがよい」と教わった海舟は、長崎から江戸に戻ったあともこれを実行しました。日常的に散歩をしていたからこそ、脳が活性化され、語学や新たな知識の習得につながったのは間違いないでしょう。

また、西郷隆盛率いる軍が江戸に攻め入り、江戸の町を焼き払おうとしたとき、茶屋の女将から情報を収集するなどして、不穏な動向にいち早く気づくことができたのも、日ごろの街歩きの経験があったからだともいいます。

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