「整形したい」と部下に相談された50代上司の決断 20代の彼女はいったいなぜわざわざ話したのか?

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部下に「整形したいがいいか」と相談されたら……(写真:y.uemura/PIXTA)
経営コンサルの筆者の元には日々さまざまな相談が寄せられるが、今回は特に印象深かった建設関連会社の50代の社員からの悩みを紹介する。「20代の部下に『整形したいがいいか』と相談されたがどうしたものか」というものだ。部下の価値観や発想に驚かされることがあるが、「相手の考え方や価値観を否定せず、いったん承認すること」がいかに重要かということをこの例は示してくれている。

「課長、整形したいんですけど、いいですか?」

入社2年目、23歳の女性部下から、驚くような相談を受けた。

「整形? どうして?」

「営業力がなかなかアップしないから」

整形によって自信をつけ、より会社に貢献できると考えたからだという。

「え、いや……ちょっと待ってよ」

上司は、建設設備会社で20年以上やってきた叩き上げの50代。最近は採用難で、女性の部下どころか、男性の部下でさえ5年ほど持ったことがない。

だからなのか。この相談に混乱してしまった。

「時間をくれ。そんな相談、受けたことがないから」

と正直に伝えた。

彼女はつつましく努力を重ねる人だった。しかし、入社当時から内面を読み取りにくい性格だった。

「まいったな。整形だなんて……」

この50代上司は、ほとほと困り果てた。

50代上司が困惑する2つの理由

50代の上司が頭を悩ます理由は2つあった。1つ目は、彼女がなぜ整形を望んでいるのか。2つ目は、なぜ彼女が自分に相談を持ちかけたのか、である。

この会社は建設設備を扱う商社で、主な取引先はゼネコンが中心。取引相手の大半が40~50代のベテラン男性だ。

彼女が整形を考えたのは、そういった相手に対してなら、顔が整っていたほうが有利と考えたからか。

だが、それで劇的に成績がアップするほど営業は簡単ではない。1回の商談で契約をとる営業スタイルならともかく、地道な付き合いが物を言う業界だ。もっと大事なことがあると彼女に伝えたいと思った。

ただ、と彼は考え込む。

正攻法でやれば必ずうまくいくかというと、そうでもない。

これまで見てきたトップセールスは、そういった理屈に合わないことをやる人が多かった。

若いころ、同僚の中にこんな人がいた。500万円のスポーツカーを借金で買い、その借金を返すために営業を頑張った。そして見事にトップセールスに上り詰めた。

荒唐無稽かもしれない。しかし整形もスポーツカーも似たような論理なのかもしれない。営業力アップのためにやりたいというのに、上司として反対していいのか。

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