「整形したい」と部下に相談された50代上司の決断 20代の彼女はいったいなぜわざわざ話したのか?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

悩んでも、悩んでも、答えが出てこない。

また、なぜ課長である私に相談したのかという点も、気になっている。

毎日顔を合わせるのだから、一言断っておこうと思ったのか。それとも人生の先輩としてアドバイスが欲しかったのか。

整形したらしばらく会社を休むことになるから、上司から了解を得たいと思ったからなのか。

それとも――。

社内で噂になったとき、

「上司から賛成されたので、私は整形しました」

と言いたいからなのか。もしそうだとしたら、正直なところ厄介だと思った。

「俺が反対したら整形は諦めるのか」と聞いたところ…

相談を受けた3日後、彼は部下と面談を試みた。どこまで立ち入ったことを聞いていいかわからなかったが、勇気を振り絞って

「親御さんに相談したのか?」

と尋ねた、すると驚くことに、

「母が勧めてきた」

と言うではないか。なおさら驚いた。整形費用も全額親が負担するという。

そこで、ストレートな質問をぶつけてみた。

「俺がやめたほうがいいと言ったら、整形を諦めるのか」

思い切って言った。すると、また意外な答えが返ってきた。

「もちろんです。上司ですから。お母さんも上司の意向に沿いなさいと言ってます」

「そうなの?」

彼は素っ頓狂な声を出した。「俺が反対したって、どうせやるんだろう」と思い込んでいたからだ。

だから決断した。

「せっかく親から授かった顔なんだから、大切にしたほうがいいと思うよ。営業力アップの方法はたくさんあるんだから、もっと別の手段で営業力を高めていこう。もちろん全力でサポートするから」

そう言った。われながら常識的な意見だと思った。が、彼女の反応が怖かった。

「そう言われても、すでに決めてます。お母さんも絶対やったほうがいいと言ってます」

このように反論されるかと思い込んでいた。ところが

「わかりました。課長が反対するなら、整形をやめます」

とすんなり引き下がったのである。彼女は拍子抜けするほどあっさり諦めた。

この一件以来、上司と部下との関係は改善した。彼女の反応も良くなった。まだ営業力の向上には結びついていないものの、整形に反対したことは正しかったのではないか。この上司はそう思い返す。

次ページ部下の感覚そのものを否定してはいけない
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事