マンションの販売不振が長期化する中国。ようやく政府が動いたが閉塞感は消えない。
膨大な数に上る売れ残りの新築マンションを地方政府が買い上げ再活用する、新たな不動産市況テコ入れ策が発表された。しかし、手法自体が新味に乏しいうえに、投入資金の規模が小さく、業界ではその効果を疑問視する声が強い。
中国人民銀行(中央銀行)は、民間企業支援の枠組みの1つとして設けた「再融資制度」を活用、3000億元(1元は21.5円)の資金を複数の政策銀行経由で地方政府系の国有企業に改めて貸し付ける。
仲介銀行のモラルハザードを防ぐため、中央銀行の融資比率は総額の60%までと決められており、各銀行は40%の自前の資金を加えて融資する仕組みだ。そのため今回の融資スキームの総額は5000億元になる。
各地の国有企業は、その資金を利用して地元の売れ残り新築住宅を購入、中国で「保障性住宅」と呼ばれる低所得者向けの賃貸もしくは分譲住宅として活用する。
このスキームが機能すれば、大量の在庫を抱えて資金繰りに苦しむデベロッパーに資金を供給できるのに加え、中央銀行の資金投入で不動産市場に安心感を与え、マインドの好転が期待できる。加えて低所得者向けの良質で安価な公共住宅の供給は政府の掲げる重要政策の1つでもあり、その意味で「一石三鳥」の効果が見込める。
こうした期待から株式市場は前向きに反応した。例えば、中国の代表的デベロッパーの1つ、万科企業のA株(深圳証券取引所上場)の株価は過去1年以上、下降線をたどってきたが、5月15日から上昇に転じ、同月22日終値の時点で30%弱、上昇している。政府の不動産テコ入れ策が一定の期待を集めているのは間違いない。
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