印刷2強、大日本印刷と凸版印刷を分析する 印刷不況でも、生き残っているのはなぜ?

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続いて、貸借対照表(5~6ページ)から大日本印刷の安全性を調べてみましょう。中長期的な安全性を示す「自己資本比率(純資産÷資産)」を計算すると、大日本印刷は62.3%です。一方、凸版印刷は53.4%ですから、いずれも非常に高い水準です。

短期的な安全性を見るための「流動比率(流動資産÷流動負債)」も、大日本印刷は175.1%、凸版印刷は182.8%もあります。120%あれば十分安全圏ですから、安全性には全く問題ありません。貸借対照表から見た財務内容は抜群にいい会社だと言えます。

余談ですが、この2社の財務諸表を見るときに、いつも興味深く感じるところがあります。損益計算書や貸借対照表を見比べると、規模や業績などが非常に似ているのです。

図表を見てください。2社の売上高、そして資産の額が、同じくらいの規模になっていますね。利益額が若干違いますが、おおむね似た数字になっています。これは昔からずっと続いている傾向です。偶然かもしれませんが、とても興味深いことだと私は思っています。

なぜ2社は不況の中でも「まずまず」なのか

冒頭でも話しましたように、印刷業界が縮小する中、大日本印刷と凸版印刷はまずまずの収益力を維持しています。この理由は何でしょうか。

それは、高い印刷技術を利用して事業を広げていったからです。かつては書籍や広告、パンフレットの印刷物や包装関連の製品が主力であり、それらが収益のほとんどを占めていました。

しかし、印刷業の不振が叫ばれるようになった時期から、半導体や太陽光電池部材、液晶カラーフィルタなどの新しい分野に参入しはじめました。時代のニーズを捉えながら自社の強みを活かして事業構造を変えていったのです。

事業別の収益をまとめたセグメント情報(9ページ)を見てみましょう。まずは大日本印刷です。出版物や広告などの印刷業にあたる「情報コミュニケーション」のセグメント利益は48億円(セグメント利益合計全体の11.3%)、食品や飲料などのパッケージ製品を含む「生活・産業」は174億円(同41.0%)、半導体や液晶カラーフィルタなどが含まれる「エレクトロニクス」は191億円(同45.0%)となっています。

主力の印刷事業と同じくらい、半導体分野の収益の割合が大きくなっていることが分かります。

凸版印刷のセグメント(11ページ)はどうでしょうか。出版物などの印刷事業にあたる「情報コミュニケーション」が258億円(67.3%)、パッケージや建材などが含まれる「生活環境」が48億円(12.7%)、半導体や太陽光電池部材などの「マテリアルソリューション」が76億円(20.0%)。主力は印刷業ですが、マテリアル事業のウェイトも大きくなっています。

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