2社はこうした業界全体の長期的な下降局面から脱却するため、新たな事業の開拓をはじめました。以前から多角化を模索していましたが、大日本印刷は2009年に古本最大手ブックオフへ出資したほか、大手書店の丸善、ジュンク堂などを傘下におさめたのです。凸版印刷も液晶テレビ用のカラーフィルタや半導体などのエレクトロニクス分野に積極的に進出しはじめました。
こうした戦略がある程度功を奏したからこそ、2社は好調とまでは言えませんが、安定した収益を稼げていると感じます。主力の印刷業の不振を、他の事業が支える構図になっているからです。
なぜ大日本印刷が凸版印刷より少しだけ上位なのか
それでは、2社の最新の決算である平成27年3月期 第3四半期決算(2014年4〜12月)を見ていきましょう。
大日本印刷の損益計算書(7ページ)によると、売上高は前の期から1.6%増の1兆0917億円。しかし、売上原価と販管費がともに微増したため、本業の儲けにあたる営業利益は0.8%減の358億円となりました。
売上原価率(売上原価÷売上高)を計算すると、前の期は81.1%、この期は80.9%ですから、ほぼ横ばいです。安定的に収益を上げていると言えるでしょう。
一方、凸版印刷はどうでしょうか。損益計算書(7ページ)を見ると、売上高は1.3%減の1兆1175億円。売上原価と販管費は少し抑えたものの、売り上げの減少が響いて、営業利益は9.8%減の188億円となりました。売上原価率は83.4%から84.1%まで増えていますから、収益力が若干悪化しています。売上高は2社ともほぼ同じですが、営業利益では少し差があります。
差をつけた要因は何でしょうか。大日本印刷は、東南アジアなど海外に向けた食品・日用品の包装材が好調だったことと、写真プリントに使われるインクリボンの売り上げが伸びたことが業績を支えました。
一方、凸版印刷は、食品や飲料、段ボールなどのパッケージ製品の売り上げが減ったことが足を引っ張りました。消費増税の影響が想定以上に長引いて製品需要が落ち込んだのと、円安によって紙などの原材料費がかさんだことが原因だと思われます。
ただ、これは同じ事業を行っている大日本印刷にとっても条件は同じです。しかし同社の場合は、先ほども触れましたように、海外向けの製品を積極的に展開していますから、この事業の収益は前の期より伸びているのです。
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