田舎の広い実家に高齢の親が住んでいるという状況は、“モノ屋敷予備軍”と言えるかもしれない。しばらく実家に帰っていない子どもがいたとすれば、一度見に行っておいたほうがいいだろう。
大家によれば、この家族は少なくとも70年前からこの長屋に住んでいたという。それだけの期間モノを捨てなければ、当然溜まっていく一方だ。
11人の生活が確かにあったという証し
キッチンからは、メスやハサミなど手術で使用する道具が出てきた。11人の中に医療従事者がいたのだろうか。プレパラートや虫眼鏡のセットに石の標本も一緒にあることから、いろんな分野に研究熱心だった医者の姿が浮かんできた。
別の部屋にある衣装ケースには、無数の工具が眠っていた。衣装ケースは約10個。そのすべてに工具がパンパンに詰められていた。カンナ、砥石、ありとあらゆるパーツがある。使い古された軍手もしまってあったので、日曜大工を趣味にしていた人がいたのだろう。
工具を仕分けしているスタッフも、「めちゃくちゃ工具が多いので、なにか自分で作っていたのかな」と言っていた。
紙類のモノが多く散らばっているエリアには、割り箸が入っていた袋がたくさんまとめられていた。印字を見てみると、日本各地に旅行へ行くたびに、訪れた店から持って帰ってきたみたいだ。乗車記念のチケットが何枚もあるので、鉄道旅行が好きだったのだろうか。オリンピックや万博といった記念硬貨は、コレクターと言っても差し支えないほど集められていた。
長屋に残されたモノたちから、顔も名前も知らない11人の生活がなんとなく見えてくる。ゴミ屋敷やモノ屋敷はただの迷惑な存在でもなければ、ただの社会問題でもない。そこには確かに人が住んでいたという証しでもある。
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