10年ぶりに訪れた実家は、知らぬ間に「ゴミ屋敷」になっていた。そこにあるのは天井まで積み上がるゴミだけで、両親亡き後に1人で暮らしていた弟の姿はない。実弟の訃報を受け、部屋を片付けに来た今回の依頼主である50代の姉は言葉を失った。
本連載では、さまざまな事情を抱え「ゴミ屋敷」となってしまった家に暮らす人たちの“孤独”と、片付けの先に見いだした“希望”に焦点をあてる。
ゴミ屋敷・不用品回収の専門業者「イーブイ」(大阪府)を営み、YouTube「イーブイ片付けチャンネル」で多くの事例を配信する二見文直社長と、同社のスタッフでもある弟の二見信定さん、そして依頼主の姉が、亡くなった弟が住んだゴミ屋敷の背景を語った。
“無臭”の異質なゴミ屋敷にあったもの
リビング、和室、2つの洋室、バスルーム。生前の弟が住んでいた3LDKの自宅は、どの部屋もゴミで埋め尽くされていた。しかし不思議なことに、これほどのゴミが10年間放置されていながらも、異臭がまったくといっていいほどない。
部屋の様子も異質だ。壁や天井の至るところにビニール紐が吊るされ、ポリ袋に入った「何か」が無数に括りつけられている。それは風呂場にまで及んでおり、浴槽の横に取りつけられた手すりにもびっしりとポリ袋が括りつけられていた。
和室にはおびただしい数の食品や弁当のトレーが捨てられていた。しかし、弁当の容器を手に取ってみると汚れひとつない。ほかのトレーも洗剤とスポンジで念入りに洗った様子が見て取れる。冷蔵庫の中にも物が詰め込まれていたが、こちらも異臭はしない。入っていたのは、やはり空の洗われた容器だった。
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