「10年没交渉の弟が急死」姉が見たゴミ屋敷の全貌 「ゴミ屋敷でも無臭」異様な部屋に遺された思い

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イーブイが2回目の作業に訪れたのは、1回目の作業から3カ月後のことだった。物件のことや大家のことを考えると、早く片付けてしまったほうがいい面もある。しかし依頼主は「あっけなく終わってしまった」と感じ、モヤモヤが残ってしまうかもしれない。

「僕らとしても何でもかんでもゴミとして捨てたほうが正直楽なんですよ。それに、この仕事は効率を求めれば最終的にそうなるはずです。でもそういうことじゃないだろうという気持ちがあるんです」(二見社長)

ゴミ屋敷
弟の死と向き合い、あとは家族でゆっくり片付けをしたいという依頼主のために、家具類は残したままで一旦作業を中断した。写真はダイニングの様子(画像:イーブイ片付けチャンネル」より)
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3カ月間、弟の“ゴミ”と向き合って感じたこと

姉も3カ月という期間があったからこそ、気持ちの整理がついた様子だ。姉は空になった各部屋を無言でまわり、丁寧に言葉を選びながら話し出した。両親と弟とは長らく離れて暮らしていたが、かつては交流があったのだという。

ゴミ屋敷連載
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「ちょっと親といろいろありまして。でも一時も3人のことを忘れたことはないです。自分の身内でもっと……もっとではないですけど悲しいことがあって、そのとき初めてちょっと忘れたかな。それまでは影みたいにずっと私の後ろに張りついている感覚でした。せめて成仏してあげたい。供養してあげたいです」

3カ月間、どんな気持ちで3人の物を片付けていたのか。

「家族に対してはいろんな思いがあったんですけど、写真を見ているうちにみんなにも若い頃があって、別にこんなふうに生きていこうと思っていたわけじゃないのだけど、上手くいかないことが出てきたりしたんだなと思いました。許せなかったことや、わだかまりもいろいろあったんですけど、お互い様だったという気持ちになってきました。つらかったし、しんどかったですけど、この3カ月の時間は、あってよかったと思っています」

「ゴミ屋敷の片付け」という仕事は、早く片付けることだけがすべてではない。部屋に遺されたさまざまな想いから、そう強く感じた。

片付け
すべて片付いた部屋の中で、亡き家族に思いを馳せる姉(画像:「イーブイ片付けチャンネル」より)
國友 公司 ルポライター

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くにとも こうじ / Kozi Kunitomo

1992年生まれ。筑波大学芸術専門学群在学中よりライターとして活動。訳アリな人々との現地での交流を綴った著書『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)が文庫版も合わせて6万部を超えるロングセラーに。そのほかの著書に『ルポ路上生活』(KADOKAWA)、『ルポ歌舞伎町』(彩図社)がある。

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