イーブイが2回目の作業に訪れたのは、1回目の作業から3カ月後のことだった。物件のことや大家のことを考えると、早く片付けてしまったほうがいい面もある。しかし依頼主は「あっけなく終わってしまった」と感じ、モヤモヤが残ってしまうかもしれない。
「僕らとしても何でもかんでもゴミとして捨てたほうが正直楽なんですよ。それに、この仕事は効率を求めれば最終的にそうなるはずです。でもそういうことじゃないだろうという気持ちがあるんです」(二見社長)
3カ月間、弟の“ゴミ”と向き合って感じたこと
姉も3カ月という期間があったからこそ、気持ちの整理がついた様子だ。姉は空になった各部屋を無言でまわり、丁寧に言葉を選びながら話し出した。両親と弟とは長らく離れて暮らしていたが、かつては交流があったのだという。
「ちょっと親といろいろありまして。でも一時も3人のことを忘れたことはないです。自分の身内でもっと……もっとではないですけど悲しいことがあって、そのとき初めてちょっと忘れたかな。それまでは影みたいにずっと私の後ろに張りついている感覚でした。せめて成仏してあげたい。供養してあげたいです」
3カ月間、どんな気持ちで3人の物を片付けていたのか。
「家族に対してはいろんな思いがあったんですけど、写真を見ているうちにみんなにも若い頃があって、別にこんなふうに生きていこうと思っていたわけじゃないのだけど、上手くいかないことが出てきたりしたんだなと思いました。許せなかったことや、わだかまりもいろいろあったんですけど、お互い様だったという気持ちになってきました。つらかったし、しんどかったですけど、この3カ月の時間は、あってよかったと思っています」
「ゴミ屋敷の片付け」という仕事は、早く片付けることだけがすべてではない。部屋に遺されたさまざまな想いから、そう強く感じた。
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