「10年間のうちに家族に何があったかなんて、第三者にはわからないじゃないですか。絶縁してしまったのかもしれないし、家族にしかわからない問題があったのかもしれません。それを『無理やりにでも行くべきだった』なんて、そんなの後からなんぼでも言えるじゃないですか」
それに、姉は見知らぬ第三者に言われるまでもなく、後悔していた。二見社長が続ける。
「依頼主さんは、『こんなことになるまでなんでほったらかしてしまったんや』とものすごく後悔しています。その後悔は死ぬまで一生つきまとうんですよ。そこに対して第三者がとやかく言うのは違うと思いませんか。だから彼女は今、地道に弟が残した荷物と1つひとつ向き合っています」
ゴミ屋敷から浮かび上がる“人間模様”
イーブイには16人のスタッフが在籍している(2023年4月現在)。そして、二見社長だけではなく彼らもまた「ゴミ屋敷の片付け」という仕事に特別な想いを持っている。二見社長の弟である信定さんも、今回の作業中にこんなことを話していた。
「『荷物がこれだけあります、片付けました、終わりです』ではないんです。ゴミ屋敷になるまでの経緯、そしてなぜそれを片付けることになったのか。そういった背景を知っているのと知らないのとでは、住人に対する考え方も変わってくるじゃないですか」
イーブイが発信する動画は、ただのゴミ屋敷の「ビフォーアフター動画」ではない。ゴミ屋敷に住んだ者たちの人間模様を映している。住人はどんな性格なのか。どんな生活をしていたのか。どんなことを考えていたのか。何か問題があるとされている人に対してでも、その背景を知れば優しくなれる。ゴミ屋敷の現場に限らず、私たちの実生活においても同じことが言えるかもしれない。
「部屋がゴミ屋敷になるなんて、誰しも起こりうることじゃないですか。ゴミ屋敷になった家族の荷物を片付けなきゃいけないときだって来るかもしれません。気づいていないだけで周りにそういう人がいるかもしれません。僕らの動画を通してゴミ屋敷の背景を知ることで、これは自分にも起こりうることなんだということをわかってもらえたらと思います」(信定さん)
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