孤独死した40代女性の遺物に見た生前の苦しみ

故人の孤立を自己責任と突き放していいのか

孤独や孤立への関心は、すでに海外でも国家的な潮流となっている(写真:torwaiphoto/PIXTA)

ある夏の日、孤独死した現場の原状回復工事を10年以上手がけている武蔵シンクタンクの塩田卓也さんは、大家からワンルームマンションの1階部分の鍵を渡された。

塩田さんがドアを開けて玄関から1歩部屋に入ると、膝丈くらいまでコンビニのゴミであふれていた。玄関から居室に踏み込むと、フローリングの床がバキンと音を立てて、簡単に割れてしまった。塩田さんは、かろうじて床材の下の材木にかかとが乗っていたため、床下への落下は免れた。しかし、1歩足を踏み外していれば骨折などの大惨事になりかねなかった。

床に敷かれた布団には、女性が亡くなった跡が黒々と染みついている。この部屋で亡くなったのは、40代の女性である。しかし、働き盛りの現役世代の孤独死は、特殊清掃現場ではよくある風景だ。年間孤独死約3万人、孤立状態1000万人――。それがわが国の抱えている現状だ。

女性は誰にも助けを求めずに生活していた

女性の前職は水商売だったが、心身ともに病み、仕事を辞めて部屋にひきこもるようになったという。次第に部屋がゴミであふれ、尿や便もそのままフローリングの垂れ流しになっていく。

足元が危険だと察知した塩田氏は、すぐさまトラックに積んであったベニアの端材を何枚も使って足場を確保した。フローリングの木材は、どこも今にも地面まで突き抜けんばかりに危険な湿り気を帯びている。

こんなジャングルよりも過酷な環境で、女性は誰にも助けを求めずに、独りで生活していたのだった。

「生前の故人様は、ご自身の窮状を誰にも相談できなかったみたいです。体調が悪くなっても、部屋の中がこんな大変な状況になっても誰にも相談できなかった。それを思うと、本当に切なくなるんですよ」

塩田氏は、そう言いながら合掌をして作業を開始した。床がボロボロだったため、すべて解体するという大作業になった。

孤独死の現場を長年取材して浮かび上がってくるのは、女性のように社会から1度崩れ落ちると一気に孤立し、立ち上がれなくなった人たちの姿だ。

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