孤独死したコロナ患者の部屋に見た過酷な孤立 誰にも助けを求められず命を落とし長期間放置

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もともとあった社会問題がコロナ禍でますます深刻で複雑な事態になる恐れがある(写真:Wacharaphong/iStock)

自宅でひっそりと、1人で最期を迎える孤独死――。ニッセイ基礎研究所によると、わが国では年間約3万人の孤独死が起こっている。そんな孤独死を取り巻く現場が、コロナ禍でさらに危機的な状況になっている。

これまで可能だった民生委員などの地域の見守り活動が困難になり、高齢者が長期間にわたって、家の中で亡くなっても遺体が発見されないという事例が相次いでいるのだ。さらに、特殊清掃業者は、実態を隠そうとする遺族や管理会社のせいで、コロナ疑いの現場を手掛けなければならなくなっている。

NHK NEWS WEBは5月24日付で衝撃的なニュースを伝えた。東京都内の住宅で一人暮らしの70代の男性が誰にも看取られずに死亡し、その後の検査で新型コロナウイルスに感染していたことが関係者への取材で判明したというものだ(孤独死の高齢者 新型コロナの感染判明 「見守り」課題に)。

この記事によると、男性は死亡する2カ月ほど前、親族と疎遠になっているうえ、足が不自由になり困っているとして、長年会っていなかった中学時代の友人に助けを求めていた。男性は小学校で教師をしていたが、50代で退職。その後、家に閉じこもるようになっていたという。

友人が病院に行くように勧めたが本人は拒否

男性は食べ物もなく、友人を頼った。友人は男性の生活を支援していたが、2週間ほど前から体調がすぐれなくなったという。病院に行くように勧めたものの、男性は拒否。死亡する前日、男性は「胸の辺りが気持ち悪い」と言うようになり、薬局で薬を買ったが、発熱やせきなどの症状はみられなかった。

しかし、友人が家を訪れたところ、男性は風呂場で亡くなっていた。その後、保健所の検査で、男性が新型コロナウイルスに感染していたことが判明した。

孤独死の8割は、ゴミ屋敷の状態だったり、偏った食事などによる不摂生だったりと、いわゆるセルフネグレクト(自己放任)だ。医療の拒否も、セルフネグレクトの一つである。この男性もセルフネグレクトに陥っていた可能性もあり、もし友人の勧めどおりに病院に行っていたら、もしかしたら結果は違ったかもしれない。そう考えると、悔やまれてならない。

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