注目すべきは、この男性はかろうじて友人に助けを求めていたことだ。そして、献身的な友人が男性を気にかけてくれたこともあり、遺体は早期発見された。
しかし、今後懸念されるのは、コロナ禍によって人と人との接触が制限され、距離を取ることが求められる中で、より孤立し、命に関わる深刻な事態になっても、誰にも助けを求めることができずに、最悪の場合、その場で息絶えてしまう人たちがいることだ。
現在、孤独死現場では、「人とのつながりが切れた」結果として、遺体が長期間放置されてしまうという事例が相次いでいる。
コロナの影響で4カ月以上も遺体が放置
10年以上にわたって孤独死物件なども含めて原状回復工事を行っている武蔵シンクタンクの塩田卓也氏は、新型コロナの影響で長期間遺体が放置された物件の特殊清掃に取り組んでいる真っただ中だ。塩田氏は、つい先日、4カ月以上放置された物件の清掃を手掛けた。
「先日手掛けた物件は、コロナの影響で地方に住んでいるご遺族が来れなくて、ずっと放置されていました。死後4カ月ずっとそのままだったんです。さすがに、近隣からは『くせえよ、いい加減にしろよ』というクレームが殺到していました。遺体が長期間放置されると、柱が腐敗体液で痛んだりして、お部屋も重篤な状態になる。高額なリフォーム費用がかかったり、スケルトン(建物の躯体だけの状態)にまで戻さなければならなかったりするケースもあります」
コロナ禍において、塩田氏はここ数カ月で、遺体の発見が通常以上に遅れたケースが増えたと嘆く。
「最近は、1~2カ月見つからないケースがざらになってきましたね。同じ孤独死でも、これまで発見が早かった65歳以上でも、長期間わからずに放置されているケースが増えています。コロナ禍で、地域の見守りの力が弱体化していることが影響していると思います。ハエがいればまだ発見されやすいと思うんですけど、今の季節はまだハエが飛んでいないので、なおさら異変が起こっても、見つけづらいですね。コロナの影響で、今後ますます痛ましいご遺体の状態になってしまう孤独死は、残念ながら増え続けるでしょう」
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