元FBI捜査官が教える「情報を引き出す」凄いワザ 「取り調べで飲み物」「仕事ぶりを聞く」の裏側

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父親は、娘のアカウントがスパムメールであふれかえったことに激怒し、キャンペーンを展開している会社に何度も電話をかけ、無礼にもほどがあると苦情を言った。ところが、その数週間後、少女はついに父親に打ち明けた。じつは妊娠しているの、と。いくつもの情報の断片が積み重なり、真実を明らかにする役割をはたしたのである。

人の行動履歴をつなぎ合わせてわかること

私は以前、政府の機密プロジェクトに関わる防衛関係の業者の某社員を調査するよう命じられたことがある。まず、容疑者の同僚数人に話を聞いた。私は引き出し法のテクニックを駆使しつつ、容疑者の習慣について少しずつ情報を集めていった。

最初にわかったのは、彼が働き者だということだった。平日もよく残業するし、週末にも出社して厳しい納期を死守しているという。その次にわかったのは、彼がメキシコシティのマンションを仲間と共有していて、年に何度か遊びにいくのを楽しみにしているということだった。

そのうえ、彼は新たなスキルの習得にも熱心だという。実際、彼はほかの機密プロジェクトに関わる社員ともよく情報を交換し、新しいスキルを身につけたり、アドバイスをしたりしていた。

能力の点から見れば、容疑者は仕事熱心なうえ、同僚とも良好な関係を築いている貴重な社員に思えた。そこで私はこうした一見無害な情報の断片をすべてFBIのアナリストに渡した。

そして、すべての情報をつなぎあわせたところ、彼が諜報活動を行っていたパターンが浮かびあがってきた。アメリカの敵対国の諜報員が容疑者と同時期にメキシコシティを訪れていたことが判明したのである。これは偶然だろうか? 

この場合はそうではなかった。じつは、容疑者が残業したり週末にも出社したりしていたのは、ほかの社員に見られずに機密情報をコピーするためだったのだ。ほかの機密プロジェクトに関わる社員と話をしていたのは、新しいスキルを身につけるためではなく、某国の政府に売れる機密情報をさらに入手するためだったのだ。メキシコシティを年に数回訪れるという、特にどうということのない情報が、容疑者のスパイ活動を暴きだすカギとなったのである。

(翻訳:栗木さつき)

ジャック・シェーファー 心理学者、ウェスタンイリノイ大学教授、諜報コンサルタント

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心理学者、ウェスタンイリノイ大学教授、諜報コンサルタント。FBIではスパイ防止活動とテロ対策の捜査官を15年、「行動分析プログラム」の行動分析官を7年務めた。現在はアメリカ本国はもとより、世界各地で講演会を行っている。

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マーヴィン・カーリンズ サウスフロリダ大学ムーマ・カレッジ・オブ・ビジネス経営学教授

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Marvin Karlins

プリンストン大学で社会心理学の博士号を取得。世界各地でコンサルティング業を展開。

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