そこで、自分がエキスパートであることを実証しようと、つい、本来は伏せておくべき情報まで漏らしてしまう。よって、相手の仕事に関する情報を聞き出すのは、有効な引き出し法のテクニックとなる。自分自身のことや仕事の内容について尋ねられると、人はデリケートな事柄まで明かしてしまいがちだからだ。
14歳の少女に「マタニティ製品」のメールが届いた理由
映画『ア・フュー・グッドメン』では、かの怪優ジャック・ニコルソンが法廷の証言台で劇的に真実を明らかにしたが、真実はかならずしもそんなふうに浮き彫りになるとはかぎらない。というのも、たとえ情報が手元にあるとしても、そんな情報はたいして役に立たないとか、無価値だとか考えがちだからだ。
だが、1つひとつは無価値に思えても、複数の情報をつなぎあわせていけば、価値が生じる場合もある。よって、問題の全体像がわかっていない人ほど、手持ちの情報を漏らしてしまう傾向がある。
FBIの防諜活動を担当する捜査官として、私はずっと、一見したところそれほど重要ではない情報の断片を収集することを心掛けていた。敏腕アナリストの手にかかれば、こうした情報の断片から全体像が浮かびあがってきて、現況の詳細がわかることがあるし、貴重な理解が得られることもあるからだ。
近年ではSNS上のビッグデータの分析技術が発達し、情報分析の重要性はますます高まっている。SNSのプラットフォームから少しずつ収集した個人情報があれば、広告主は特定の製品を利用してくれそうなターゲットを絞ることができる。
たとえばマタニティ製品を売る業者であれば、SNSでのやりとりや検索履歴を基盤に高度なアルゴリズムを活用し、妊娠していると思われる女性を特定することができる。そして、実際にターゲットにキャンペーンを展開した結果、ある14歳の少女のEメールの受信箱にマタニティ製品の売り込みメールが殺到するようになった。