熱海市長が目論む「入湯税と宿泊税」の二重取り 「二重課税」に映る増税に市内からも懸念の声

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熱海
熱海市では宿泊税の導入をめぐり議論になっている(筆者撮影)

日本有数の観光地熱海。温泉が豊富なので、入湯目的で旅館等に宿泊する観光客も多い。今、その熱海市では齊藤栄市長が温泉に入浴する客に課す入湯税に加えて、宿泊客に課す宿泊税を課すことを公約に掲げて実現化を目指しており、注目が集まっている。

入湯税は入湯行為に対する課税であり、宿泊税は宿泊行為に対する課税なので、課税対象が違う。つまり二重課税ではないというのが課税側の理論だ。しかし、熱海のような大温泉地では温泉宿がほとんどで、温泉に入る目的で宿泊する客からすると二重に課税されると映る。事実、議会や宿泊業界から導入に慎重な意見も多く、先行きは不透明な状況だ。

熱海ならではの税制

実は、熱海市は日本で唯一、別荘税(別荘等所有税)を徴収している自治体だ(後述する法定外目的税のひとつ)。不動産所有者には固定資産税が課されることは周知だが、熱海市内に不動産を所有しながら市内に住民登録がない所有者等に対し、固定資産税に加えて別荘税を課しているのだ。市内に別荘を持ち、週末などを過ごす人も多い熱海ならではの税制だ。

税率は延べ床面積1平方メートルにつき年額650円。これについては、「納税義務者が同じであり、不当な二重課税ではないのか」との声もある。それに対し、熱海市側は「固定資産税は家屋の価格(評価額)、別荘等所有税は述べ床面積をそれぞれ課税標準として課税されており、課税標準が異なっているので二重課税とはならない」(同市HPの別荘等所有Q&A質問6より)という見解を示している。

全国唯一、別荘所有者に対して「固定資産税と別荘税」を実現した熱海市が、さらに観光客を狙って「入湯税と宿泊税」の二重取りを実現できるか、探ってみた。

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