熱海市長が目論む「入湯税と宿泊税」の二重取り 「二重課税」に映る増税に市内からも懸念の声
東京に続いて宿泊税を導入している自治体はまだ少ない。2023年4月時点で東京都、大阪府、福岡県、福岡市、北九州市、京都市、金沢市、長崎市、倶知安町だ。
税率は、東京都の場合は、宿泊料金が1人1泊1万円未満の宿泊には課税されず、1人1泊1万円以上1万5000円未満は100円、1万5000円以上は200円となっている。福岡県では一律1人1泊200円だが、福岡市と北九州市の2市については、県と市の双方が課税する「二重課税」となっている(ただし県内で同一額となるように調整)。
熱海市は宿泊者1人1泊につき200円の税額を提案している。12歳未満や修学旅行の児童、生徒などは免除する。熱海は日本有数の大温泉地であり、前述のように入湯税収入全国第2位の規模だ。同市が宿泊税を導入すればインパクトはかなり大きいだろう。しかも第1位は近場で競合している箱根町であり、宿泊税の導入で税収が上がるという単純な話ではない。むしろ客が近隣の温泉地に流れてしまうおそれがある。
選挙公約で宿泊税の導入を掲げる
そもそも熱海市での宿泊税の導入は、齋藤栄市長が2018年の市長選の際に公約として掲げたものだ。同年の市議会9月定例会では宿泊税導入に質問が集中し、否定的意見が相次いだ。
その主な内容は、「宿泊税を導入しているのは、東京都や大阪府、京都市、金沢市などの観光文化遺産に恵まれた大都市。熱海は文化遺産や文化的景観は見劣りするので、宿泊税導入は痛手になり、宿泊者の立場からすれば二重取りになる」といったものだ。
二重取りという意見に対して、市長は「熱海に泊まり、温泉に入ることが目的の顧客や、入湯税を預かる特別徴収義務者である宿泊業者からすると、一連の行為の中で税が2回課税されることとなることから、二重取りではないかといったご指摘はもっとも」としたうえで、「一方で、宿泊税と入湯税は納税義務者、宿泊者と入湯客、課税客体、宿泊行為と入湯行為、そして課税標準、宿泊日数と入湯日数が異なるものであり、税法上の観点からはそれぞれ課税することに問題は生じないと考えている」とした。
しかし、「実態論としてそのような指摘・御懸念をいただくことは指摘のとおりなので、丁寧な説明と慎重な議論を尽くし、来遊客、市民、双方にとって魅力的なまちになっていく仕組みづくりを行っていきたいと考えており、理解を賜りたい」と述べた(熱海市議会議事録 平成30年9月定例会10月10日。筆者が一部編集)。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら