独居の90歳親が「末期がん」、家族はどうすべき? 後悔のない選択をするために考えておきたい事

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患者さん本人が余命を具体的に知ることについては賛否両論ありますが、少なくとも、今後良くなっていく可能性があるのか、それとも難しいのか、また、もしかしたら急に動けなくなる可能性があるのかという大まかな経過は知っておいたほうがいいと思います。

最期の過ごし方には選択肢があって、自宅、病院、施設と、場所によって大きく変わってきます。

まずはお父様がどこで過ごしたいか、希望を聞いてみてはどうでしょうか。もし家で過ごすことを望む場合には、24時間体制の訪問診療や訪問看護を選ぶといいと思います。何か迷うことがあったらいつでも連絡することができ、緊急時には駆けつけてもらえます。

お父様は1人暮らしを続けてこられたということで、今後も家で1人で過ごそうと考えるかもしれません。その場合は、症状との兼ね合いによっては、家族の誰かがそばで見守られたほうがいいでしょう。

デイジーさんは、介護のために休みを取ることを考えているようですが、まずは医師に余命を聞いて相談したうえで、どれくらい休みが取れるのか、職場に確認するといいと思います。

「介護休暇」と「介護休業」

介護のために仕事を休む制度には、「介護休暇」と「介護休業」の2種類があり、デイジーさんの今の状況に当てはまるのは「介護休業」です。

介護休業は、家族に介護を必要とする人がいる場合に長期の休みを取得できる制度で、要介護状態(または2週間以上、常に介護を必要とする状態)で介護が必要な家族1人につき、通算93日まで休みを取ることができます。一方、介護休暇は通院の付き添いなどで短時間の休みが必要な場合に、1日または時間単位で取得できる休みを指します。

ただし、仕事を休んでそばにいるのが絶対にいいとは言えません。なかには「家族に弱っていく姿を見せたくない」という人もいますから。もし自分がそばにいたいと思うなら、「家で過ごすなら、仕事を休んで一緒にいたいと思うけど、どうかな?」などと率直に聞いてみるといいでしょう。

また「ついてあげられないことに罪悪感を覚える」とありますが、そんなふうに思わないでくださいね。お父様の生活と同じように自分の生活も大切にしてほしいですし、ご自身が後悔しないためにどう過ごすか、そのことも大事にされたほうがいいと思います。

最後に、「入院治療が始まってすぐに容体が悪化」されたとのことですが、もし今も入院中で家に帰りたいという希望があるなら、すぐにその旨を医師に伝えて相談してみてください。寝たきりでも、注射での薬が始まっていても、家で過ごすことは可能です。

がんの痛みは、在宅医療でも病院と同じように抑えることができます。使用する薬も、症状に合わせて対処する方法も、基本的に病院と在宅医療で違いはありません。

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家で過ごす場合は、何かあったときに入院できるところを確保しておいたほうが安心です。

今の病院で入院できますか? もしできない場合は、緩和ケア病棟のある病院にバックベッド(後方支援病床)の登録しておくことをお勧めします。バックベッドの登録は、在宅医を通じても行うことができます。

まずはお父様がどうしたいか、デイジーさんがどうしたいかを話し合うところから始められるといいと思います。デイジーさん、お父様、そしてご家族が後悔のない時間を過ごせるよう、心から応援しています。

(構成:ライター・松岡かすみ)

本連載「がんでも認知症でも『在宅ケア』のすすめ」では、ご家族の在宅ケア、介護のお悩みを受け付けております。お悩み相談は、こちらのフォームよりお願いします。
中村 明澄 向日葵クリニック院長 在宅医療専門医 緩和医療専門医 家庭医療専門医

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なかむら あすみ / Asumi Nakamura

2000年、東京女子医科大学卒業。国立病院機構東京医療センター総合内科、筑波大学附属病院総合診療科を経て、2012年8月より千葉市の在宅医療を担う向日葵ホームクリニックを継承。2017年11月より千葉県八千代市に移転し「向日葵クリニック」として新規開業。訪問看護ステーション「向日葵ナースステーション」・緩和ケアの専門施設「メディカルホームKuKuRu」を併設。病院、特別支援学校、高齢者の福祉施設などで、ミュージカルの上演をしているNPO法人キャトル・リーフも理事長として運営。近著に『在宅医が伝えたい 「幸せな最期」を過ごすために大切な21のこと』(講談社+α新書)。

 

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