「親の認知症を認めない」50代娘に見える深層心理 家族の異変を察知する「会話力」の身に付け方

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患者さんの呼吸状態をチェックする向日葵ナースステーションの看護師(撮影:向日葵クリニック)
コロナ禍や高齢化の影響で需要の高まりをみせている在宅ケア。「住み慣れた自宅で療養したい」「最期まで自宅で過ごしたい」という患者や家族の思いを支えるのが、患者宅を訪問して在宅医療や訪問介護などを行う在宅ケアだ。
これまで1000人を超える患者を在宅で看取り、「最期は家で迎えたい」という患者の希望を在宅医として叶えてきた中村明澄医師(向日葵クリニック院長)が、若い人たちにも知ってもらいたい“在宅ケアのいま”を伝える本シリーズ。
9回目のテーマは、老いた親とのコミュニケーションについて。日常生活の困りごとをどう引き出し、老いによる異変をいかに察知するか。聞き方のコツや心がけたい姿勢とともに解説する。

夫婦2人で暮らしている80代のAさん(夫)と妻。私は末期がんのAさんの在宅医として関わり始め、2人の生活を見守ってきました。

Aさんについて、医師やケアマネジャーとのやり取りの窓口(キーパーソン)として支えているのは、Aさん夫婦宅の近くに住む娘さん(50代)です。週に一度ほどのペースで実家を訪れて2人の様子を見ている娘さんですが、最初は訪問診療が入ることをなかなか受け入れられず、「今の父は1人でも通院できるのだから、訪問診療は必要ない」という姿勢でした。

処方薬を目の前に混乱する母親

がん末期は、短期間のうちに症状が大きく変化します。これは連載6回目の記事(家族ががん終末期、いつ介護休暇を取得すべきか)でも説明した通りです。たとえ今、体を自由に動かすことができたとしても、動けない状態に変化するスピードが思った以上に早い場合が少なくありません。

「今は動けているから大丈夫」と思っていても、それが2週間後も同じ状態でいられるとは限らないのです。そのため、がん末期では、通院がまだ難しくない状態から在宅医が関わることがあります。

Aさんの娘さんも、そうしたがん末期の症状の変化について、通院していた病院の主治医から説明を受けていたはずですが、現実を受け入れられない気持ちが勝っていたのでしょう。「訪問診療が入るのは、もっと後でいい」と言う娘さんをなんとか説得する形で、在宅での診療がスタートしました。

ところがAさん宅に通い始めてひと月ほど経った頃、妻の記憶力が低下していると感じるできごとに遭遇しました。妻は高血圧や糖尿病などで、近くの病院でいくつかの科にかかっています。私が訪問したとき、妻は病院で処方された複数の薬を前に、「今は何を飲むんだったっけ……?」と途方に暮れていました。

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