"死亡事故"が警鐘を鳴らす「日本のサウナ」の未来 「より熱くより冷たい」を追求する現状の違和感

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極端な温冷交代浴にせよ、大自然の「天然の水風呂」への入水にせよ、結局のところ「過信をしない」謙虚な自己判断力こそが、最も重要だと言えるだろう。

すなわち、前者の敵は自分自身の健康状態に対する過信であり、後者の敵は、大自然の脅威に対する過信だ。

『究極の「サウナフルネス」世界最高の教科書』内で、著者のカリタ・ハルユ氏は何度も繰り返し、「サウナとは自分の身体の声に耳を傾けるための場所」だと主張している。

サウナも冷水も、決して「アトラクション」ではない

サウナも冷水も、決して「アトラクション」ではない

より強い快感を求めたくなる衝動、大自然がもたらす開放感、周りではしゃぐ仲間たち……そういった外部の刺激や誘惑に流されず、冷静に心身の状態を分析してリスクヘッジを行い、自分自身に合った楽しみ方で心穏やかにリラックスする。サウナとは、本来そういう場所なのだ。

逆に言えば、個々人が冷静な判断力を保ちながら謙虚に楽しむ、成熟した土壌さえできれば、過度に「禁止ルール」を増設する必要性もないはずだ。

今回の初のサウナ水難事故を受けて、日本では今後ますますサウナについての法制度やルールに関する議論が盛んになり、これまでの楽しみ方を抑圧する禁止事項も増えてくるのかもしれない。

だが、まずは施設側と愛好家それぞれが正しい判断力で現状の改善に取り組み、自発的にリスクを回避・低減していく姿勢のほうが、サウナ本来の魅力を未来へつなぐために大事なことだと、筆者は強く感じている。

こばやし あやな サウナ文化研究家、フィンランド在住コーディネーター、翻訳家

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Ayana Kobayashi

1984年岡山県生まれ、大阪・神戸育ち。2011年フィンランドに移住し、現地大学院で芸術教育学を学ぶ。「フィンランド公衆サウナの歴史と意義」というテーマで執筆した論文が学内最優秀論文に選ばれ、2016年にユヴァスキュラ大学修士課程を首席で修了。卒業後に起業し、通翻訳や現地コーディネート業務を続けるかたわら、サウナ文化のエキスパートとして、日フィン両国のメディア出演や講演活動、諸外国の浴場文化のフィールドワークを行なっている。2019年に『公衆サウナの国フィンランド--街と人をあたためる、古くて新しいサードプレイス』、2021年に『クリエイティブサウナの国ニッポン』(ともに学芸出版社)を出版。

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