ウクライナへの戦闘機供与は慈善ではなく投資 外務省報道官が現地で語る「生存をかけた戦い」

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ウクライナ外務省
キーウにあるウクライナ外務省(筆者撮影)
ウクライナ・キーウにあるウクライナ外務省の建物は、湾曲した正面に白亜の石柱が並ぶ、いわゆるスターリン様式の大きな石造物だ。ソ連共産党が1930年代に聖ミハイル黄金ドーム修道院を破壊し(2000年に再建)、その敷地に建てた元ソ連ウクライナ共産党本部である。外務省の正面入り口前には土嚢が積み上げられ、監視ポストでは常駐の兵士が周囲に目を光らせており、戦時下の緊張が伝わってきた。
筆者は5月から6月にかけウクライナなど中東欧諸国を取材し、5月17日にウクライナ外務省で、オレグ・ニコレンコ外務省報道官にインタビューした。
インタビューは外務省の建物内の、おそらく面会室や会議室として使われている天井の高い殺風景な部屋で、英語で約50分間行った。

【インタビューの主なポイント】

  • F16戦闘機を何よりも求める理由(1ページ)
  • 侵攻がウクライナにもたらした大きな打撃(2ページ)
  • 戦争終結に「領土奪還」は必須(3ページ)
  • 汚職と腐敗、過剰なナショナリズムの指摘にどう答える(4ページ)
  • ウクライナにおけるロシア語とロシア文学(5ページ)
  • 兵器支援のできない日本に求めること(6ページ)

――戦争を取り巻く状況はウクライナ側に有利に傾いているように見えるが、現状をどう考えているか。

状況は依然として非常に緊迫している。新たな反攻のために、国際的な仲間の国(パートナー)の支援を受けて軍を強化しているが、われわれは現実的であり、容易ではない任務であることはよくわかっている。

今回が最後の反攻ではない。ロシアがウクライナの領土を侵略している限り反攻は続く。もちろん、仲間の国の支援決定は領土回復を可能とし、過去数週間にバフムトの20平方kmを解放したが、ロシア軍もバフムトをはじめ紛争ラインで攻撃を強化している。できるだけ解放地域を広げる考えだが、重要なのは仲間の国が軍事支援の約束を守るとともに、新たな支援を行うことだ。

戦闘機供与は仲間への投資

――新たな軍事支援とは米国製F16戦闘機のことか。

ウクライナ外務省のオレグ・ニコレンコ報道官
ウクライナ外務省のオレグ・ニコレンコ報道官(筆者撮影)

特にF16を求めている。ゼレンスキー大統領が(5月中旬)欧州を歴訪した結果、いくつかの国がウクライナ軍パイロットの訓練プログラムの開始を表明した。数カ月前にウクライナが提案した、供与までの時間を訓練に充てるという論理を、多くの国が承認したことを大変うれしく思う。

供与決定があれば、その時点でウクライナ軍のパイロットが存在することになる。非常に大きなステップだ。

F16を求めるのは欧州に一番多く配備されているからであり、他の戦闘機でもよい。西側航空機でロシアから制空権を奪わねばならない。戦闘機供与はウクライナの戦いを助けるとともに、欧州安保にも貢献する。これは欧州諸国にとって慈善事業ではなく、欧州の仲間への投資だ。

一方、西側供与の防空システムは大きな効果を発揮している。この数週間、ほぼ連日、ロシア軍のロケット、ドローン攻撃にさらされているが、95%以上の迎撃が可能となっている。

――各国の武器供与は遅すぎるのではないか。

ウクライナの微妙な立場を理解すべきだ。われわれは仲間の国に対して恩知らずではない。仲間が行っている支援を評価し感謝する。

他方、ある国が10倍、20倍の能力を持つ国と戦争をしているのなら、必要な支援に取り組むべきだ。だからわれわれは時々、声を上げることがある。支援の遅れを見て協議することがあるが、単に批判しているわけではない。

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