――キーウ市内を歩くと戦争の英雄像があふれている。過剰なナショナリズムにつながらないか。
なぜそう考えるのか。毎日国民が死んでいる。国を守るため、他の人の生命を守るために、勇気を見せて命を犠牲にした兵士を、この特別な状況下で英雄として扱わないことがあるだろうか。これは権威主義の国で起きたことではない。
第1にウクライナは小国であり、ロシアは過去30年間にわたり、ウクライナのあらゆる分野を支配してきた。軍隊は解体され、産業は完全にロシアに依存している。そうした灰の中から再生し、自由のために戦っているとすれば、それを行っている人間を英雄として扱わないことがあるだろうか。
第2に過剰なナショナリズムがウクライナに起こらないのは、ウクライナは民主主義社会であり、民主的選挙が行われ、改革が進められてきたからだ。われわれには特別な点があるが、その一つが、戦争下でも改革を進めていることだ。すでに欧州連合(EU)加盟候補国としての地位も得ており、交渉開始を協議しているが、交渉開始の条件をすべて満たしている。
汚職、腐敗に対し改革半ば
――自由と民主主義はウクライナに根付いているか。
もちろんそうだ。ウクライナは世界の自由の象徴となった。
私は2022年に世界中を回ったが、「ゼレンスキーを知っている。自由のために戦っている」と人々から言われた。自由はウクライナに深く根付いている。ソ連の一部だった他国との違いだ。
われわれは何のために戦っているか知っている。自由、民主主義、人権、説明責任が本当に重要なことを知っている。独立を達成してから、政府が市民を正しく扱わなかったときに、1990年の民主化運動、オレンジ革命、ユーロマイダン革命という3つの革命を経験した。ロシアがウクライナを攻撃したのは、まさにこのためだ。
つまり、ロシア世界では、すべての人々はロシアのようでなければならない。しかしわれわれは違うからだ。
――汚職、腐敗の問題は深刻ではないのか。
汚職問題がないとは言わない。われわれはまだ巨大な汚職問題を抱えている。それは成長、発展を妨げる。この問題が政府や国民にとって最優先課題だ。
今の状況は軍に最大限の支援を与えるときだが、その中でも汚職対策の改革を進めている。その一つの例が、最高裁長官が起訴され、汚職で公判が開始されたことだ。
30年間存在した複雑な問題が1、2日で解決できるわけがないが、重要なことは、最高首脳の戦略と意思があることだ。それがあれば成功すると思う。
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