ウクライナへの戦闘機供与は慈善ではなく投資 外務省報道官が現地で語る「生存をかけた戦い」

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――戦争は汚職撲滅のよい機会にもなるのでは。

だからこそロシアとの関係を清算した。ロシアはウクライナの多くの機関に影響力を持っており、政党や政治家を金銭支援し、ウクライナを内側から掘り崩そうとしてきた。戦争を通じて、だれがそのような人間で、どのような立場を代表しているかが明らかになった。

多くの挑戦があるが、正しい方向に向かっている。

――仮に戦争に勝利したとして、少数民族としてのロシア系住民保護が問題となるのではないか。

ウクライナは憲法で保障されている少数民族の権利を尊重する。2014年以前は何の問題もなかった。民族問題はロシアが戦争を正当化するための神話だ。1991年にウクライナが独立して以降、ドンバス地方の住民は幸福に問題なく共存していたのを、ロシア語話者とウクライナ語話者の地域が人工的に線引きされた。

前線に行けば、ロシア語を話す多くのウクライナ軍兵士に会うことになるだろう。彼らにとってはウクライナが自分の国だ。ロシア軍はウクライナに来て、ロシア語を話す人間を解放するためと称して、ロシア語話者を殺している。まったくナンセンスで、戦争を正当化するためでしかない。

国会議員にもロシア語話者がいる。ウクライナ語は公用語で、政府職員は日常業務でウクライナ語を話すが、日常生活ではどの言葉で話してもかまわない。

ただ、戦争がウクライナ語への愛着を強めた。ウクライナ語がわれわれの戦いと生存のシンボルとなった。かつてロシア語話者が多かった地域でも、多くの人がウクライナ語を評価し、切り替えている。

キーウなどでも両親がロシア語を話していた家庭でも、子供にはウクライナ語だけで教育をするようになっている。子供にはウクライナ語だけを話してほしいと思っているのは、それが団結を促すからだし、ロシアのやり方を見て、言語がいかに武器として使えるかがわかったからだ。

通りでロシア語を話す人がいてもだれも問題にしないが、言葉の問題はわれわれの内面の引き金になった何かだった。

ドストエフスキー作品が秘めたもの

――キーウの本屋でトルストイなどロシア語の古典が廃棄されるのを見たが、残念だ。

問題はロシア語、ロシア文化、ロシアの影響が、よい目的ではなく悪い目的に使われてきたことだ。われわれはロシア世界の一部にはなりたくない。

ドストエフスキーなどを削除することはできないが、彼らの思想を深く見ていくと、ロシアの帝国主義的な野望がわかる。プーチンがいかにそれらの考えから意欲を吹き込まれたかがわかる。その結果は現状を見れば明らかだ。

要はウクライナ人に何が欲しいか自分で選択させろということだ。それがすべてだ。ロシアにわれわれが何を選択するか指示されたくない。ウクライナが伝統やルーツという国家のエッセンスに向かったのは自然なことだ。

多くの国が発展の過程でそうした段階を経過している。ドイツはドイツ語、フランスはフランス語というように。ロシア語が完全に消えるわけではない。ただ、われわれは小説、言語、文化がわれわれを掘り崩すために使われたという強いトラウマを抱えている。

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