ワグネルがロシア軍にもたらす「新たな頭痛」 傭兵部隊のバフムト撤退でさらなる困難
民間軍事会社ワグネルがウクライナ東部の都市バフムトを掌握したことで、ロシアは多大な犠牲を払いながらも貴重な勝利を手に入れた。だが、これにより、予測不能なリーダーが指揮する残忍な傭兵組織にロシア軍が依存している実態も浮き彫りになった。
そのリーダーとは、ウラジーミル・プーチン大統領の盟友であるエフゲニー・プリゴジン氏。同氏が5月25日、ワグネル部隊のバフムトからの撤退開始を発表したことで、ロシア軍はバフムトを保持し続けられるかという疑問が生じている。ウクライナがかねて予想されている反転攻勢を開始した場合には、その疑問はなおさら強まる。
ロシア軍の戦力に巨大な空白
「ロシアの参謀本部は、ワグネル撤退で生じる空白を埋めるために、十分な数の予備兵を見つけなければならなくなる」。ロシアのニュースサイト「メドゥーザ」で軍事アナリストを務めるドミトリー・クズネツ氏に質問を送ったところ、このような回答が返ってきた。「しかも、ウクライナの攻勢をかわしながら、これを行わなければならず、それだけでも相当な数の予備兵が必要になる」。
プリゴジン氏は25日、ワグネルの戦闘員はウクライナでの「次の任務」にあたる前に「休養と準備」を行うことになると述べた。バフムトに何人のワグネル戦闘員が残っているかは不明だ。
アメリカの当局者は、昨年12月時点で、ウクライナには約5万人のワグネル戦闘員がおり、そのうちの1万人は戦闘経験を有する志願戦闘員、4万人は戦闘参加と引き換えに恩赦を約束された元囚人だと推定していた。