クレムリン・ドローン攻撃をめぐるこれだけの謎 ロシアの自作自演? ウクライナの攻撃? あるいは別の…

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モスクワ・クレムリン(ロシア大統領府)近くにある「ドローン飛行禁止」の標識(写真・AFP=時事)

アメリカと並ぶ2大核保有国であるロシアの力を象徴するクレムリンと赤の広場。そのクレムリンで2023年5月3日起きた前代未聞の「ドローン攻撃事件」は、本稿執筆時点(5月5日)でも真相は不明のままだ。

ロシアは「ウクライナによるプーチン大統領の暗殺を狙ったテロ事件」と主張しているのに対し、ウクライナのゼレンスキー政権は自国の関与を全面的に否定している。一方でアメリカは明確な判断を示しておらず、3カ国がそれぞれ異なる対応をしているのが今回の事件の特徴だ。

折から、ゼレンスキー政権が近く大規模反攻作戦を開始するとの見通しから緊張が高まっている。この事件の実相とウクライナ情勢への影響はどうなのか。

ロシア大統領府発表は12時間後

事件が起きたのは、モスクワ時間の2023年5月3日午前2時27分と 2時43分の2回。広場の周囲に設置された監視カメラが捉えたと思われる映像によると、最初のドローンがプーチン氏の執務室がある巨大な旧元老院ビルのアーチ型屋根付近で爆発し、煙が上がった。

次に別の方角から飛来した2機目も屋根付近に衝突、炎上した。この時、警備要員とみられる2人が屋根近くの外階段を登っていた。2機とも爆発物を積んでいたとみられる。

ロシア大統領府の発表によると、当時プーチン氏はクレムリンにいなかった。クレムリンの防空部隊が「レーダー戦装備」により無力化したため、負傷者や建物への損害もなかったという。

事件の経過は謎だらけだ。そもそも上記の大統領府発表が出たのは、5月3日午後2時45分。発生から12時間も経過した後だった。発表は、事件が「大統領暗殺を狙い、計画されたテロ行為だ」とウクライナ側の攻撃であると断定した。そのうえで「報復措置を取る権利を留保する」と強調した。

しかし、戦争相手とはいえ、ウクライナ政府の攻撃と断定した根拠は示されず、なぜ発表まで発生から12時間かかった理由も明らかになっていない。

発生直後のクレムリンやモスクワ市の対応にも、疑問が少なくない。クレムリンでひと際目立つ旧元老院ビルの屋根で2回も爆発があったのに、直後に報道がなかったことは極めて不自然だ。

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