ウクライナ侵攻の戦況は膠着状態が続いている。ロシア軍は東部で攻勢を続けているが、いまだにプーチン大統領が渇望している「象徴的勝利」でさえ挙げられないままだ。
プーチン氏は勝利への展望を示せないまま、最近では「国家存亡」が懸かっていると危機感を国内向けに煽り始めた。それでも今のところ、戦争への支持も高く、プーチン体制は強固だ。それはなぜか。さまざまな要因があるが、今回は問題の根本にあるロシア人の国民性の観点から考えてみたい。
世論調査での高支持率の理由
侵攻開始から丸1年を控えた2023年2月半ば、ある著名な社会学者の発言が注目を集めた。独立系世論調査機関レバダセンターの前所長で、現在はセンターの研究責任者でもあるレフ・グトコフ氏のポーランド紙とのインタビューだ。
レバダセンターの調査では戦争支持が70%から80%前後の高い水準で推移していることについて、実際の支持率はもっと低いとする通説を明確に否定し、本音の支持率を反映しているとの見解を示したからだ。グトコフ氏は「私自身、戦争支持の程度の高さにショックを受けた。侵攻に対し、社会はもっと否定的な反応を示すと予測していたからだ」と述べた。
こうした高い戦争支持率を示す今のロシア社会はどういう状況になっているのか。グトコフ氏はこう分析する。「基本的に、世論は政治への無関心、いつか戦争は終わるという期待、生活は変わらない、という気持ちがない交ぜになっている」と。そのうえで、本当に反プーチン、戦争反対の意見は10%から12%前後ではないかとみているという。
グトコフ氏は戦争支持が根強い要因として、戦死者の実際の規模を含め、実情を伝えないクレムリンによるプロパガンダの影響も大きいとしながらも、「実際のところ、ロシア社会は予想よりもっと(政府に)従順で、受け身であることがわかった」と語った。
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