侵攻開始から2年目に入ったウクライナ情勢は、今後どのように展開するのか。今後の焦点は何か。ロシア、ウクライナ、そして米欧の3者の思惑を通して考えてみた。
手詰まり感と危機感――。2023年2月24日の侵攻1年を迎えるに当たって、プーチン・ロシア大統領が2月21日に行った長大な年次報告演説を聞いて筆者が感じた印象はこれだった。
高揚感なきプーチン演説
1時間半に及んだ演説では「西側が戦争を始めた」「ロシアに戦場で勝つことは不可能だ」などお得意の歴史の歪曲と軍事的威嚇を象徴するセリフが飛び出したが、会場の拍手に熱気はなく、高揚感のなさは隠しようもなかった。なぜか。その理由は、プーチン氏が話したことではなく、話さなかったことにあった。
その代表的なものは、この1年間、とくに直近の軍事的成果だ。大統領としては、侵攻開始以来初めてだった今回の年次報告演説でシンボル的な戦果を誇示したかったはずだが、結果的に報告に盛り込めるような戦果を挙げられなかった。これはプーチン氏にとって大きな屈辱だったろう。
ロシア軍は大統領の厳命を受け、2023年1月中旬から東部ドンバス地方で攻勢に出ていた。しかし結局、当面最大の標的であった要衝バフムトの攻略も演説までに果たせなかった。つまり、演説が盛り上がるはずのないことを大統領自ら事前にわかっていたといえる。
しかしこの戦果以上に、会場を埋めた政権幹部や国民が聞きたかったのに、大統領がスルーしたものがある。戦争がいつ勝利で終わるのか、そして新たな戦争動員があるか否か、だ。
ロシア軍の攻勢は東部で続いている。しかし、装甲兵器の不足は深刻で、練度が低く、ろくな装備も持たされていない兵士を大量に前線に投入するだけの硬直的な人海作戦に終始している。
当初、ロシア軍の攻勢に身構えていたウクライナの軍事筋も「バフムトは取られるかもしれないが、全体として脅威はない」と強気になっている。これではプーチン氏として戦争終結の展望を示せるわけがなかった。
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