米の移植用腎臓「健康なのに10%廃棄」の驚く原因 情報が少ない中で早合点する「模倣の罠」の怖さ

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腎臓
米国の腎臓移植を例に「集合的幻想」の怖さについて解説します(写真:my box/PIXTA)
事実に見えたことが実際には思い込みだったにもかかわらず、間違った認識に基づいて大勢が行動する「集合的幻想」は、社会や組織、個人にいたるまで大きな弊害をもたらします。心理学者のトッド・ローズ氏が、今回は「アメリカの腎臓移植」における集合的幻想の例について解説します。
※本稿はローズ氏の著書『なぜ皆が同じ間違いをおかすのか 「集団の思い込み」を打ち砕く技術』から一部抜粋・再構成したものです。

ドナーが現れるのを待っていったティム・マッケイブ

2009年、ティム・マッケイブは鬱血性心不全の徴候が出て地元の病院に行った。診察の結果、心臓と肺のまわりで血液がたまりつつあり、命の危険があることがわかった。5年前に妻のクリスティーナから腎臓を移植してつないだ命だった。それがいまになって突然、拒絶反応を示し、心臓が異常をきたしたのだ。日常的に透析を受けながら、新たなドナーが現れるのを待つことになった。

いい知らせを祈る長い日々が始まった。

ティムは背が高く、短く刈った茶色の髪、ライトブルーの鋭い目、割れたあごをしていた。混じりけのない強いニューヨークなまりがあった。透析生活が続いていた2010年代なかば、人の気も知らないセールスの電話がかかってきたときには、怒鳴りつけて電話を切ったという。

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