自制心について学んだところで、いよいよ行動に移してみよう。そう、喫煙だ。
世界保健機関(WHO)の報告によると、世界的に喫煙率は低下しているものの、2017年時点で、イギリスの成人の15%が喫煙しており、年間7万8000件もの避けられた死を招いている。タバコを1本吸うごとに、常習喫煙者の寿命はおよそ15分短くなる。
ソーシャル・スモーカー(自分ひとりだと喫煙しないが、誰かがいると付き合いで喫煙する性向のある人)でも、病気のリスクは高まる。タバコを吸ったり、副流煙を肺いっぱいに吸いこんだりするたびに、微小粒子状物質が肺に侵入し、肺の粘膜を傷つけ、深刻な呼吸障害や心血管疾患、心臓発作を引き起こす可能性があるのだ。
本数を減らすだけでも効果はある。肺がんのリスクは、喫煙量が多いほど直線的に増加するのだ。さらに、禁煙すれば、かなりのダメージが回復する。失われた年月を少しずつ取り戻し、1年も経たないうちに、喫煙に関連する心疾患の相対的リスクは半減する。だが、どうすればそれができるだろうか?
意志力に頼るなら禁煙の成功率は低い
イギリス公衆衛生庁(PHE)によると、もっとも効果的な禁煙法は、地域の禁煙サービスを利用することだ。そこでは、サポートグループ、行動療法、薬理学的手法を紹介してくれる。しかしこれらを試した人のうち、短期間でうまくいくのは16%だけだという。
先ほどの自制心の訓練を生かすつもりなら注意が必要だ。禁煙の成功率がもっとも低いのは、意志力だけで耐え抜き、きっぱりやめようとするやり方だ。どんなに自分は意志が強いと思っていても、ニコチン代替品の助けを借りずにタバコをやめられる人は10%に満たない。
段階的アプローチも、あまり意味がないようだ。2万2000人以上を対象にした比較研究によると、決められた日に急に禁煙した人と、その日までにじょじょに喫煙行動を減らしていた人の禁煙の成功率には、ほとんど差が見られなかったという。
どのルートを選んでも、少しくらいの失敗で世界は終わらない。挑戦をつづけ、支援を得て、実践したいという自分の気持ちを信じれば、いずれは成功するはずだ。最終的には、失敗するか、煙のない健康な未来を手に入れるかの違いは、前向きな考え方にあるのかもしれない。
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