20年前親が経験した「中学受験」と今の本質的な差 サピックス小学部に聞いた「今求められるもの」

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佐藤:20年程前から起こってきた変化ですが、ある種、現在行われている新学習指導要領や大学入試改革の方向性と重なるようにも思います。大学入試でも、思考力・判断力・表現力を問うような問題が増えてきていますよね。

広野:現在大学入試改革で求められている力を問う問題を先取りしていた、という見方もできると思います。1996年と2001年は入試問題に顕著な変化が表れていますが、それまでも開成中高内で「これからの社会で生きていくためにはどのような力が必要か」をたくさん議論なさってきたのでしょう。その結果、今の形式にたどり着いたといえると思います。

佐藤:こうした出題内容の変化はすべての私立中学校へと広がっていったのですか。

広野:個々に違いはありますが、基本的にはほとんとの私立中学へ広がっていきました。さらに、近年は2021年からセンター試験に代わってスタートした新テスト(大学入学共通テスト)の影響もあり、中学入試でも表やグラフを読み取ったり複雑な条件を整理したりすることがより求められるようになりました。

インタラクティブな授業で発想を広げる重要性

佐藤:中学入試内容の変化に伴って、サピックスの授業内容や授業スタイルにも変化があったのでしょうか。

広野:創業当時からサピックスは子どもと講師の双方向性のある授業を重視してきたので、大きな変化はありませんでした。一方的に解説するスタイルでは子どもは頭を使わなくなっていきます。子どもたちに発言してもらい、それを聞いた他の子も一緒に考えるような時間を設ける。そうした授業を重視してきました。

佐藤:近年ではアクティブ・ラーニングといった言葉も広がり、インタラクティブに学ぶ重要性への意識も広がりつつあります。それを30年前から実施していたのですね。双方向性のある授業について、どのような意義を見出しているのですか。

広野:子どもたちの発想力を伸ばしていくことができるという点の価値を感じています。算数でいうと、例えば「場合の数」の単元で「どんな解き方があると思う?」と投げかけます。こうした問題は、中学の数学では、公式に当てはめて解くようになっていきます。

しかし、中学入試の「場合の数」の問題においては、ひとつひとつ書き出して調べ上げていくという問題が主流です。そのため、子どもたちが思いつくことをそれぞれ発言し、それを書き出していく過程が欠かせないのです。

佐藤:そうした解き方は一見遠回りに見えますが、実は丁寧に書き出して調べる力が重要なのですね。大人は公式を覚えてしまったほうが効率的だとつい思ってしまいがちです。

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