20年前親が経験した「中学受験」と今の本質的な差 サピックス小学部に聞いた「今求められるもの」

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広野:保護者が点数や偏差値などの「結果」だけを見てしまうと、子どもも「結果さえ良ければいい」と思うようになっていきます。例えば、結果を追うばかりにテストでカンニングをしてしまう子もいます。冷静に考えればカンニングで正解しても、実力は伴っていないので意味がないとわかるはずです。

同様に、答えを書き直したり問題を解かずに答えだけ書き写したりしても学力をつけることにはつながりません。子どもは悪気があってこうしたことをしているのではなく、保護者に叱られるという苦痛を避けるために、やむを得ず、結果を繕う行為をしているケースが多いのです。

佐藤:結果より過程を見ることが重要なのですね。「これができるようになったね」「70点だったけれど80点になったね! あと、20点取るにはどうしていこうか」といった声をかけられれば、子どもたちは安心し、自信をつけることにもつながっていきそうです。

広野:はい、過程を認めながら振り返りにつなげていけるといいですよね。「80点とれたなら、あと20点取るにはどうしたらよいと思う?」といったことを対話する中で、子どもが自分自身で「どんなミスをしているのか」に気づくことができれば、次のステップに進んでいくことができます。

子どもに100%勉強に集中させるべきか?

佐藤:「中学受験のためには、学校の行事なども諦めて100%勉強に集中しなければいけないのではないか」と悩んでいる保護者の声も耳にします。学校行事で体験的に学ぶことも多いでしょうし、個人的には小学校で友達の中で学ぶことも大切にしたいと思うのですが。

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広野:秋に運動会や学芸会、移動教室などが設定されている小学校も多いので、私たちも保護者の方から「参加を見送るべきか」とよく相談されます。感染症が流行っている時期などは、こちらとしても意向を示しにくい側面はありますが、基本的には「小学校での時間を大事にしてほしい」と伝えています。

佐藤:受験生である前に小学校の最終年度でもある。また、移動教室にいくことで身の回りのことをすべて自分で管理する経験を始めてし、自律につながるといったこともあるでしょう。

広野:子どもたちが24時間365日張り詰めた状態でいることは、精神的によいこととはいえません。うまく受験に向かっていったご家庭は、いかに気分転換させるのかを大事にしていました。子どもの個性にもよりますが、友達と行事に打ち込むことでストレスの発散につながることもあるでしょう。

近年は社会と接続した入試問題も多いので、行事などの体験的な学習が活かされる可能性もあります。保護者としては、悩ましいところではあると思いますが、私が接しているご家庭は、学校行事を大事しにしているケースが多いです。学力だけではない子どもの成長の機会を大事にしていけるとよいですよね。

佐藤 智 ライター・教育コラムニスト

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さとう とも / Tomo Sato

両親ともに、教師という家庭に育つ。都留文科大学卒業後、横浜国立大学大学院教育学研究科へ入学・修了。教員免許取得。新卒で、ビジネス系出版社の中央経済社へ入社。その後、ベネッセコーポレーションに中途入社し、教育情報誌『VIEW21』の編集を経て、独立。ライティングや編集業務を担う、レゾンクリエイトを設立。著書に、『公立中高一貫校選び 後悔しないための20のチェックポイント』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『先生のための小学校プログラミング教育がよくわかる本』(共著/翔泳社)がある。

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