20年前親が経験した「中学受験」と今の本質的な差 サピックス小学部に聞いた「今求められるもの」

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広野:書き出しの問題で解けるのか、式を使うべきなのかは瞬時にはわかりません。だから、子どもたちが頭を使いながら「こんな解き方があるね」「こういう見方もありそう」と話をしていく中で、問題に対する頭の使い方を学んでいくのです。

ほかにも、速さの問題に対して、式を立てる方法もあれば、線分図を描くこともありますし、ダイヤグラムを書いて解く場合もあります。5人の子どもがいたら5通りの解き方あってもおかしくないのです。

授業の中では、いくつかの解き方を出し合いながら、ベターな方法を選び取る過程を大事にしています。一人で問題に向き合うだけでは発想に限界があるので、子ども同士で対話しながら発想を広げていく作業がとても重要なのです。それにみんなの前で発言し認められることは、子どものモチベーションにもつながります。

佐藤:講義型の授業ではなく、対話的に学んでいるということは驚きました。中学受験に向けた塾の場合には、どんどん先に進んで量をこなすというイメージを持っている保護者も多いのではないですか。

広野:大人は量をこなすような学び方のほうが安心しますからね。基本的には、ワイワイガヤガヤ子ども同士で話し合いながら授業は進んでいますよ。

とはいえ、6年生の演習が中心の時期になると、教員から解き方を確認するような講義型の時間も増えます。試験時間内に解く練習も必要にはなってきます。また、理科や社会でも頭を使って答える問題に立ち向かうには、「考える材料」がなければいけません。だから、知識の必要性を否定するわけではありません。

高学年の子どもへの接し方とは

佐藤:小学校高学年になると反抗期も始まり、接し方が難しくなるという保護者のお悩みを耳にします。「何か言うたびに反発される」「つい口出しをしたくなってしまうため、喧嘩になる」といった声を聞くことも多いです。勉強について不安がある場合は、より心配になってしまうのではないでしょうか。こうしたお悩みを持った保護者の方にはど何をお伝えしていますか。

広野:「反抗期は精神的な自立の過程なので大丈夫ですよ」とお伝えしています。とはいえ、不安になってしまう気持ちもわかります。そうした時には無理してコミュニケーションを取る必要はないと思っています。

反抗期の子とうまく接しているご家庭は、役割分担を大切にしています。例えば、お母様が厳しく接するのであれば、お父様は優しく接する。その逆パターンもありますし、祖父母が一緒に見守っているケースもある。全員が厳しく子どもに接すると、「居場所がなくなった」と感じさせてしまう危険性があります。

接し方だけでなく、お母様が日頃の送り迎えを担当し、お父様が志望校選びのサポートをするといった分業をしているご家庭も増えています。

佐藤:高学年になると、点数や偏差値がより気になってくると思います。こうした時期に保護者が注意すべきことはありますか。

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