佐藤:実際に中学入試の出題内容にどんな変化が起きているのですか。
広野:首都圏の中学入試をリードする存在である開成中学校の出題内容を見ると、大きな傾向の変化が2回ありました。1回目は1996(平成8)年。それまでは算数の大問が4題から5題程でした。そして、勉強量を見るような問題の割合が多かったのです。
この傾向から大きく転換し、大問3題または4題の形式にして、解答用紙の解き方を書かせるスペースを大きくとるようになりました。加えて、問題の数を減らした分、頭を使う問題を増やすようになりました。
佐藤:記述のスペースを大きく取り、子どもたちの思考力や表現力を測ることに重点を置くようになっていったのですね。次の入試内容の変化はいつだったのでしょうか。
子どもたちに馴染みがない文章を出す狙い
広野:2001(平成13)年で、そのタイミングでは国語の出題内容が大きく変わりました。それまでは、記号選択や該当箇所の抜き出し、要約などで解答する問題が多かったのですが、この時期からすべて記述式に変わりました。さらに、読解問題を2題出題していたのを1題に減らして、読み込む文章も一気に長くなりました。
つまり、初見の文章をじっくり読み取る力も重視されるようになりました。子どもたちに馴染みがないような文章が出されるようになったことも特徴です。恋愛を題材にした小説が出されたり、海外文学の翻訳が出されたり。いろいろな文章に親しんだ経験が問われていると感じます。
佐藤:入試の場で長い文章を読み取るには、日頃からそうした文章に接していることが求められそうです。また、いわゆる教科書に出てくるような文学作品だけでなく、多様な種類の文章に触れていることも求められそうですね。
国語の記述式ではどのような文章を書くことが求められるようになったのでしょうか。
広野:自分なりに「作者が何を考えているのか」を考えて、それに対して「自分はどう思うか」ということを問うような出題が増えていきました。要はその場できちんと考えて、なおかつ自分の言葉で説明できるような、そういった入試問題に大きく変わっていったのです。
佐藤:そうなると、インプットしたことをそのままアウトプットするような力ではなく、いろいろなことを組み合わせて考えたり、多様な体験を経てそれを自分の言葉で表現したりすることが求められますね。
広野:そのとおりです。何が出題されるかわからない以上は、何が出ても怖くないようにしなければいけません。例えば、解き方を丸暗記させるよりも、どうしてそういう解き方になるのかをきちんと考えさせないと、応用が効きませんよね。
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