バルミューダ、スマホ事業「スピード撤退」の凄さ わずか1年半で撤退も、素早い決断は手本のようだ

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実際にバルミューダは家電とスマホの組み合わせで勝負を挑んだが、人びとに訴求するにいたらなかった。

さらにアプリの良さも伝わっていたかというと心もとない。ソフトウェアの開発は大規模化しており、アップル、サムスン、シャオミ、ファーウェイなど少数のベンダーがひしめく。

このレッドオーシャン化する事業環境のなかで、相対的に小さな企業が闘いを挑むのは、かなり困難がつきまとっただろう。

バルミューダのこれから

ところで、私はバルミューダがスマホを発表した際、それを取り上げた番組でコメンテーターをしていた。もちろんメディアは好意的に取り上げる。なかなか厳しい道だろうと思った私は、しかしお手並み拝見という表現でコメントした。

実際に、私はこのバルミューダの携帯端末事業撤退を悪くは考えていない。彼らは東証グロース市場に上場している大企業である。いったん、事業に参入してダラダラとキャッシュを垂れ流す企業が多い中で、なんという早い決断だろうか。ダメだったらすぐに撤退。そして違う事業にリソースを振り分ける。これで、事業失敗の経験を得る。これは皮肉ではなく企業の手本ではないか。

決算説明会のなかで、「躊躇せずチャレンジしたこと自体は良いことだった」「大いなる夢と希望を持って飛び込んだ」「仮に数年前にもう一度戻っても、躊躇なく携帯端末事業に参入する」と述べている。

私が最も驚いたのは「携帯端末事業に再参入する可能性」を問われた同社が完全否定するかと思いきや「慎重に検討します」と答えている点だ。

そもそも読者が勤める企業でも、新規事業は数あるだろうが、成功するのは一握りだ。ほとんど失敗する。ハード事業はなおさらだ。株主でもない以上、未知の領域に挑戦した企業は責めるべきではない。

携帯端末事業は残念だったが、これからも同社の未知なる挑戦を応援したい。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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