なお、私はサプライチェーンに関わるコンサルティングをなりわいとしている。原材料の高騰も半導体の高騰も間違ってはいない。しかし、まさに現在では原材料の高騰が一段落している。原油価格が落ち着いてきたのは知られているところだ。
さらに2023年上期以降は、半導体の逼迫も落ち着き、半導体各社はむしろ収益減を予想している。ゆえに、原材料と半導体を事業撤退の主理由に考えるのは、ややナイーブなきらいがある。
原価の上昇はきわめて由々しき事態ではある。しかし通常、企業は収益と利益のあがっている商品であれば原価上昇でも供給は継続しようとするし、中期的な観点から事業戦略を練るだろう。
それより、撤退の理由は単純に売れなかったことと、ソフトウェア等の開発が困難だったからだと私は考える。実際に、四半期報告書によれば前第1四半期の携帯端末関連売上高は1億7700万円だったのに対して、当第1四半期のそれは200万円となっている。
正直、私は見間違えたのではないかと自分を疑ったほどだ。しかし、この売上高であれば、ここからも原材料、半導体説はやや無理があるのではないかと思われる。
大変に失礼だが、実際に私のまわりでバルミューダの端末をもっている人は1人もいなかった。
そもそもスマホ事業はレッドオーシャン
現在ではスマホ事業はレッドオーシャンといえる。中国から巨大な台数を背景に、大量生産・高品質・低コストの端末は多く登場している。
バルミューダは、高額でも支払える層をターゲットにしたが、アップルの牙城を崩せなかった。デザインは人目を惹くものだったが、消費者が高価格を認めるほどではなかった。人びとは同価格ならアップルかあるいはほかのハイブランドを選択した。
アップルのブランドイメージの強固さに加えて、アップルの場合でいえば、マック、スマートウォッチ、タブレット、リアル店舗などの連携による掛け算の価値に、バルミューダは勝てなかったということだ。
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