日本人が考える「メンタルトレーニング」の誤解 科学的な根拠に基づいた「行動変容」させる方法

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そもそも「チャッターは、私たちに痛みを引き起こすからこそ価値がある」ということが心理学の真髄です。チャッターは、実はあなたの人生の課題に過ぎないのです。

その点、本書は、自分の本当の課題に気づくことができる本でもあります。本書を参考にして自分のツールボックスを作れば、解決しなくてもいい悩みと、解決すべき課題が明らかになるでしょう。

そこがわかると、たどり着くのは「悩みとはありがたいものだ」ということです。

そして、その段階までメンタルのトレーニングをしていくことこそが人生だということが、実存心理学のベースとして古くから言われています。

メンタルトレーニングとは何か?

この点は、フィジカルトレーニングと一緒です。

諸外国のトップスポーツの世界では、国内オリンピック委員会などで、精神科医と臨床心理士、スポーツ心理学者が一緒になって選手のメンタルにアプローチするという取り組みが行われています。

日本の場合は、オリンピック選手が強化を行うナショナルトレーニングセンターなどでメンタルトレーニングに携わるのは、「日本スポーツ心理学会認定 スポーツメンタルトレーニング指導士」という資格を持つ者、という基準があります。

それにもかかわらず、「メンタルトレーニングとは何か」といったリテラシーが広まっていないこともあり、極端に言えば、誰でもメンタルトレーナーやメンタルカウンセラーと名乗れるので、誤解も多いのが現状です。

たとえば、「ポジティブ思考」という言葉一つとっても、膨大なポジティブ思考に関する先行研究があります。

田中ウルヴェ京氏
スポーツ心理学者で五輪メダリストの田中ウルヴェ京氏(写真:所属事務所提供)

「どんな思考の種類が自分にとってポジティブなのか」は人によって違います。また、いわゆる一般的に言われる“ポジティブ”になったからといって、試合に勝つわけではありませんよね。「笑顔でやろう!」は、ある人にとっては重要なキーワードなのかもしれませんが、笑顔になればシュートが決まるというなら、そんなうまい話はありません。

先述のメンタルトレーニング指導士といった資格は、最低条件として大学院で心理学かスポーツ科学領域で修士をとり、一定数の実践経験の評価をクリアし、本気で勉強しなければ取得できない資格です。

当然、資格取得はスタートに過ぎませんから、それだけで有能であるという証明にはならず、だからこそ、実践経験を積み続けていく必要のある専門領域です。

現在、若手の指導士も多いですが、資格を持って活動している人は、営業したり宣伝したりすることはないので、表には見えにくいかもしれません。

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