腰痛で悩む人が知らない「痛みを防ぐ体の使い方」 柔軟性を高めておきたいのは「腰」ではなかった

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少し古いデータになりますが、日本整形外科学会の「腰痛に関する全国調査」(平成15年)によると、日本で腰痛の症状を有する人は3000万人いると推計されています。また、厚生労働省が実施した「平成28年 国民生活基礎調査」のなかの「病気や怪我の自覚症状」という項目において、男性では1位が腰痛、女性では2位に腰痛が挙げられていました。

このように腰痛を抱える人が多い最大の原因は、私たちが2足でまっすぐ立っているからと考えられています。

私たちの体を横から見ると、支柱である背骨は上半身の重心位置よりも後方(背中側)にあるため、腹部と胸部の重量によって常に背骨は前方に引っ張られる形になっています。立っていても座っていても、ふと眠りそうになったときに、上半身が大抵、後方ではなく前方に倒れてしまうのはこのためです。

その背骨を真っすぐに立てる役割をしているのが、上半身の後方にある強力な背筋群(脊柱起立筋、横突棘筋:おうとつきょくきん、腰方形筋など)です。背筋群は体を横にしていない限り、常に一定の力を出して背骨を支えなければならないため、疲労を起こしやすいのです。

さらに、2足で立つことによって、筋肉だけでなく腰椎や、腰椎と腰椎の間にあるクッションである椎間板の負担も大きくなります。

ギックリ腰や腰部の骨折などで歩くどころか立つこともままならない場合でも、腕と脚で体を支えて四つ這いになれば、移動ができます。このことから、四足歩行動物の腰の負担は、ヒトに比べて極めて小さいことがわかります。私たちは二足歩行と引き換えに腰痛のリスクを負ってしまったといっても過言ではないのです。

腰に負担をかけないための方策

腰痛が宿命だからといって、「あっても仕方ない」とあきらめる必要はありません。日常生活で少し気をつけることで、腰痛を軽減したり予防したりすることは可能です。

まず、立っているときはできるだけ背すじを伸ばして、上半身を床と垂直に保つよう心がけましょう。

スウェーデンの整形外科医アルフ・ナッケムソンは、椎間板(第3腰椎と第4腰椎の間の椎間板)にかかる圧力を測定することで、姿勢によって腰にかかる負担を数値化しました。すると、立った姿勢のときに椎間板にかかる圧力を100とすると、背中を丸めて前傾したときの負担は1.5倍にもなっていました。

前傾して荷物を持った場合、腰の負担は2~2.5倍に跳ね上がります。下にある物を持ち上げようとした拍子にギックリ腰になりやすいのは、このためです。

荷物を持ち上げる場合は、背すじを伸ばしてできるだけ上半身は床と垂直に保ち、膝と股関節の曲げ伸ばし、つまり下半身の筋肉を使って起き上がりましょう。こうすれば椎間板だけでなく、腰の筋肉の出力も最小限に抑えることができます。

また立った姿勢で荷物を持ち歩く際には、支点となる脊柱と力点となる荷物の距離を近づけるため、体に密着させておくことも大切です。

料理をする、洗濯物を干す、掃除機をかけるといった家事をする際には、どうしても前かがみになりがちです。このようなときは足を前後に開いてできるだけ上半身を横に向けると、腰の負担は軽減されます。こうすると上半身を支えるときに腹筋群も働くため、背筋群の出力が半分近くまで減るのです。

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