アメリカが中国に圧勝したフィリピン争奪戦 大統領選勝利から1年、ボンボン・マルコス氏変身の理由

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マルコス大統領はこれまで「すべての国が友人、敵はなし」として外交面では中立政策を掲げ、中国やロシアなどを刺激しないように努めてきた。ところが今回の声明では、台湾海峡やウクライナ情勢をめぐり、明らかにアメリカの主張に寄り添う姿勢を示した。

他方フィリピンにとっては、これまで疑念を抱いていた南シナ海問題に対するアメリカの関与について、防衛義務の確約を取り付ける意義があった。

見返りに軍備、経済、栄誉礼

アメリカ政府はフィリピンへの「見返り」として巡視船艇4隻や輸送機C-130H3機など軍事装備品の移転を表明した。アメリカ大統領経済使節団の派遣も表明された。

マルコス氏は訪米中に多くのアメリカ企業関係者と面談し、エネルギー、健康、デジタルなどの分野で13億ドルの投資約束を取り付けたという。なかには初の原発となる小型モジュール原子炉導入をめぐる協議もあった。

マルコス氏は5月3日にはアメリカ国防総省を訪れ、バイデン政権下では外国首脳として初めて正式な栄誉礼で迎えられた。その後、マルコス氏が見守る中でフィリピンのガルベス国防相とオースティン国防長官が、先の首脳会談で発表された「相互防衛の指針」(米比ガイドライン)に署名した。陸海空や宇宙、サイバーのそれぞれの領域で相互運用性を高め、有事への対応力を向上させるための指針だ。

首脳会談、共同声明、ガイドラインと矢継ぎ早に繰り出された安保協力の言葉や文書以上に重要な意味を持つのは、ノイノイ・アキノ元政権下の2014年に締結された防衛協力強化協定(EDCA)に基づき、アメリカ軍が使用できるフィリピンの基地をこれまでの5カ所から9カ所に増やした点だ。

(地図・共同通信)

マルコス氏は5月4日、アメリカ戦略国際問題研究所での講演で「EDCAは災害対応が本来の目的。中国をはじめ他国を攻撃するために基地を使用する意図はない」と話した。しかし、この発言が中国へのリップサービスに過ぎないことは明らかだ。

2023年4月に明らかにされた4カ所は、海軍基地として初めて対象となった北部カガヤン州のカミロオシアス海軍基地、同州のラルロ空港、北東部イサベラ州のメルチョラデラクルス基地と西部パラワン州バラバク島だ。

バラバク島は南シナ海の最前線で、残りの3カ所は台湾有事に備えた選定だ。ルソン島北端から台湾最南端の距離は約350キロメートルと沖縄・那覇からの距離の半分以下。災害対応のためならば3カ所も北部に集中させる意味はない。

地図を開くと、これが対中国シフトであることがわかる。実際に台湾有事となれば、アメリカはフィリピン側の了解のあるなしにかかわらず、これらの基地を必ず使用するであろう。

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