「ルフィ」強盗事件、「悪党の天国」にしたのは誰か 上から目線でフィリピンを指弾するのはたやすいが

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2022年2月2日、日本の広域強盗事件容疑者の送還などに関し、フィリピン・マニラで記者団の取材に応じるレムリヤ法相(写真・共同)

マニラ首都圏パラニャーケ市ビクータンにある入管施設に日本のマスコミが押し寄せ、テレビカメラの放列ができている。日本で発生した連続強盗事件の指示役「ルフィ」が収容されているとみられているからだ。この10年ほどの間で、フィリピンにこれほど多くの日本メディアが殺到した例はない。南シナ海の領有権問題にも、大統領選挙にもほとんど関心を示さない日本のテレビ局だが、日本人がらみの事件には時に強く反応する。

今に限ったことではない。かく言う私も新聞社勤務時代はフィリピンで事件を何度も追いかけた。紙面の扱いはだいたい、大統領に単独会見した時などよりよほどデカかった。

金さえあれば何でもできる

今回のきっかけは2023年1月19日、東京都狛江市で90歳の女性が殺害された事件だった。関東で強盗事件が相次いでいたが、死者が出たことで報道も一気にヒートアップした。連続強盗を指示していた「ルフィ」を名乗る人物の通話履歴から、ビクータンに収容されている渡辺優樹容疑者(38)らが捜査線上に浮かんだ。

以後、テレビ局を中心に日本のマスコミが多数の記者やカメラマンを現場に送り込み、朝昼の情報番組、夜のニュース番組で収容所の様子や渡辺容疑者らの現地での行動を取り上げ、放映することになった。

フィリピンでは収容中に強盗や詐欺を指示できるのは、携帯電話が自由に使えるからだ。金さえあれば、携帯だけではなくさまざまな自由が手に入る。個室やエアコンを与えられ、収容所スタッフのエスコート付きで外食まで認められることが可能だ。そもそも日本への送還を回避するため、金を払って虚偽の事実で刑事告訴してもらったという報道もある。

こうしたことから日本の情報番組ではコメンテーターらが一様に「(フィリピンは)とんでもない国ですね」「腐敗は根深い」などと訳知り顔でコメントしている。

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