フィリピンの団結を訴えても社会分断は深いまま マルコス大統領就任100日、歴史修正の動きも

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2022年9月23日、ブルームバーグのインタビューに答えるマルコス大統領(写真・2022 Bloomberg Finance LP)

「ボンボン、悪くないじゃないか」。そんな声が聞こえてくる。

フェルディナンド・マルコス・ジュニア(ボンボン・マルコス)氏が2022年6月30日にフィリピンの第17代大統領に就任してから100日余が過ぎた。20年にわたって独裁体制を敷いた父のイメージ、強権的な統治と暴言が目立ったロドリゴ・ドゥテルテ前大統領の路線継承を訴えた選挙戦から、日本を含めた海外ではフィリピンで権威主義化が一気に進むのではないかと予想する向きもあった。ところが攻撃的で無茶な物言いがウリだった前任者とは真逆な物腰の柔らかさが「独裁者の息子」のイメージを薄め、波風を立てない姿勢が一定の評価につながっているようにみえる。

しかしながら選挙戦で深化した社会の分断が癒やされる気配はなく、一方で父の時代を美化する歴史修正がジワリと進められているようにみえる。

恵まれた環境でスタート

2022年10月5日夜、首都圏のホテルで催されたマニラ海外記者クラブ主催の晩さん会に出席した大統領は、100日の成果を聞かれて「最高の人材をそろえ、コロナ禍の火消しに追われるなかで機能的な政府を構築した」と答えた。まずは人事、体制を整えたということだ。確かに経済チームには経験のあるテクノクラートをそろえ、外相には実績のあるキャリア外交官を起用した、全般に手堅い布陣と評価されている。

民間調査会社パルスアジアが9月中旬に実施した新政権の政策評価でも、出稼ぎ労働者への福祉、犯罪防止、環境保護など13項目中11項目で支持が不支持を上回った。不支持が上回ったのはインフレ対応、拮抗したのは貧困対策だった。

政権は概ね恵まれた条件下でスタートした。国内的にはコロナ禍が収束に向かいつつあり、外出やマスク着用などの制限が緩和できるタイミングだった。学校も対面授業ができるようになった。

2022年7月26日、ルソン島北部でマグニチュード7.1の地震が発生、9月26日には台風16号がスーパー台風となってルソン島を横断したものの、いずれも被害は想定を下回った。

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