これから書くことは、そもそも家事が得意でもなんでもないズボラな私が、このような公の場にて恥を忍んでも家事の話を書かねばならぬと思った最大の動機であり、是非とも1人でも多くの人に考えてもらいたいことであります。
それは、「老後と家事」について。
ナニ、老後と……家事? いったいそこに何の関係が……? ハイもちろん私もずっとそう思っていた。
わが母の老いに直面するまでは。
母を苦しめたのは「家事」だった
母は、亡くなる3年前から認知症を患った。それは家族にとって、そしてきっと誰より母自身にとっても、暗中模索の3年間だった。何しろこの病は治らないのである。昨日できていたことが今日はできなくなっていくことの永遠の連続なのである。つまりは日を重ねるごとに「母がどんどん母じゃなくなっていく」のである。その希望のなさが、何よりつらかった。
中でも、母を苦しめたのが「家事」だった。
専業主婦で頑張り屋だった母は、完璧に家事をこなす人だった。毎日家中をピカピカに掃除し、大量の洗濯物を洗って干して、あれこれレシピ本を見ては凝った料理を作ってテーブルいっぱいに並べるのが母の当たり前の日常であり、プライドでもあったと思う。
だが病を得た途端、それは一気に、途方もない難事業と化した。
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